2023 Fiscal Year Annual Research Report
Art collection and outflow by the Ueda family, a lumber merchant called Fuyukiya-focusing on commercial and cultural activities-
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21K12889
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
宮武 慶之 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30760087)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 商業史 / 茶の湯 / 材木商 / 沽券 / 不動産 / 動産 / 相続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は冬木屋三代目政郷を中心に、材木商としての商業活動と致富による美術品収集に着目した。また江戸時代を通じて冬木屋本分家が所有した土地に着目し、入手と相続、売却についての調査を行なった。 1)冬木屋の致富 従来、冬木屋の致富は延宝三(一六七五)年の金杉堀の工事を冬木太郎右衛門ともう一名が請負ったとされるが、過去帳及び系図からは冬木屋との関係は確認できず、致富の過程を資料から再構築した。冬木屋の主たる致富は三代目政郷ら本分家による宝永元年からの飛騨南山での元伐請負であることが確認できた。致富と同時に美術品収集では、宝永五年、三代政郷は旧飛騨領主であった金森家より千利休作竹花入「園城寺」(東京国立博物館蔵)、白雲子(比丘子文)・月江正印両筆墨蹟「痴絶墨蹟跋」(個人蔵)、龍巌徳真墨蹟「与無夢一清偈」(根津美術館蔵)の三作品を入手していることが確認できた。これらの作品入手は現在確認できる冬木屋の比較的初期のコレクションと位置付けられ、致富と美術品による資産形成が確認できる点で重要である。 2)冬木屋の所有した不動産の相続と売却 国会図書館及び栃木県立文書館の所蔵する江戸の土地に関する資料から、江戸時代後期に冬木屋が所有した土地を確認した。これらの記録から入手時期と相続または売却の情報を整理した。その結果、土地の入手時期では、歴代による資産形成と相続が確認できた。一方、売却に関しては寛政四年以降に集中していた。このことは従来、述べられる冬木屋当主である七代目喜平次が幼少であり、後見を巡る争いがあった点を明確にする点で重要である。研究の結果、後見を巡る対立とは、分家である小平次家と、当主の生家である文右衛門の、分家同士の対立であることを明確にした。当初は小平次が後見となり対立は収束したものの、その後に実母つるが後見となって以降、不動産の売却は加速している点が確認できた。
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