2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12908
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤井 努 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (50769817)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 経験的生命倫理学 / 生命倫理学 / メタ倫理学 / 幹細胞研究 / オルガノイド研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2003年、生命倫理学の方法論的転換として「経験的転回」が提唱された。経験的生命倫理学とは、生命科学が提起する倫理問題に対して、「理論」(理論的な分析)と「経験」(経験的なデータを用いた分析)を統合することにより規範的な結論を導く学問分野である。本研究では、1)日本の視座を導入することで、欧米中心の経験的生命倫理学を相対的に捉え直し、多様な文脈に応用可能な方法論を構築し、2)その方法論を、例えば、幹細胞研究が提起する倫理問題に応用することで、規範的な結論を導くことを目的としている。 本年度は、日本の経験的生命倫理学に関連する先行研究を読み解くとともに、理論と経験を架橋するための方法論を探究するため、有志研究者と各種勉強会を開催した。後者に関しては、「ASHBi生命倫理勉強会」に、デイヴィッド・ヒューム研究者である澤田和範氏(関西学院大学、日本学術振興会PD)を招聘し、3回にわたるヒューム連続講義を開催した。また、京都大学在籍の有志研究者とメタ倫理学に関する輪読会を企画開催し、理論と経験を架橋する方法論の哲学・倫理学的基礎を掘り下げて検討した。いずれの勉強会も次年度以降も継続実施する予定である。 さらに、経験的生命倫理学の分野において最前線で研究を進める英米圏の研究者(ブリストル大学のジョナサン・アイブス氏、リチャード・ハクスタブル氏、オックスフォード大学[2022年1月からシンガポール国立大学]のマイケル・ダン氏)との共同研究も本格的に開始した。新型コロナウイルス感染症の影響で対面で議論することができなかったが、次年度の感染状況が改善すれば、現地でより集中的に学術連携を深める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、今年度中に英国の共同研究者を訪問し、集中的に意見交換を行い予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡英することができなかった。しかし、文献研究に注力したり、国内での研究会や勉強会を企画開催したりすることで、研究計画を遅滞なく進めることができた。そのため、今年度の研究進捗については「(2)おおむね順調に進展している」と評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、1)今年度実施してきた文献研究を基に、欧米の経験的生命倫理学を相対化し、多様な文脈に応用可能な方法論を構築するとともに、2)その方法論を具体的な倫理的課題に当てはめる。本研究目的を達成するために、経験的生命倫理学の方法論に関して、経験的生命倫理学の分野を先導する英国、シンガポールの研究者を訪問し、集中的に議論を行う(新型コロナウイルス感染症の感染状況、ならびに出入国に関する各国の方針を注視しながら、海外出張の時期を判断する)。加えて、今年度中に経験的データを収集するために、実証研究の計画を開始する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染状況ならびに出入国に伴う各国の規制に鑑み、今年度、予定していた海外出張をキャンセルせざるを得なかった。次年度、今年度の状況は改善されると予想されるため、次年度以降の海外出張費用に充当する。
|
Research Products
(29 results)