2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K12908
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
澤井 努 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (50769817)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経験的生命倫理学 / 生命倫理学 / ELSI |
Outline of Annual Research Achievements |
2003年、生命倫理学の方法論的転換として「経験的転回」が提唱された。経験的生命倫理学とは、生命科学・医療が提起する倫理的課題に対して、「理論」(理論的な分析)と「経験」(経験的なデータを用いた分析)を統合することにより規範的な結論を導く学問分野である。なお、ここでいう規範的な結論は、哲学的にも妥当で、社会にも受け入れられるようなものを想定している。本研究は、従来の欧米中心の経験的生命倫理学を相対的に捉え直し、多様な文脈に応用可能な方法論を構築するとともに、その方法論を生命科学研究、特に脳オルガノイド(多能性幹細胞等から生体外で作製される三次元脳組織)を用いた研究に伴う倫理的課題に応用することで、規範的な結論を導くことを目的とするものである。 本研究期間では、脳オルガノイド(多能性幹細胞等から生体外で作製される三次元脳組織)を用いた研究をめぐる倫理的・法的・社会的課題の考察を踏まえ、2022年12月上旬に、日本の市民約300名を対象にオンラインのアンケート調査を実施した。その成果は、国際技術哲学会(The Society for Philosophy and Technology)第23回国際会議等で学会発表するとともに、順次、国際誌への論文投稿の準備を行った。また同調査の結果を基に、実験哲学、および社会心理学を専門とする共同研究者とともに国内外の科学者を対象にした追加調査実施のための準備も行った。科学者を対象にする調査に関して若干の課題に直面したため調査開始が遅れているが、本研究期間に実施してきた、従来の欧米中心の経験的生命倫理学を相対的に捉え直す作業を土台に量的調査をさらに展開している。なお、既に実施した全ての調査、また追加で実施する調査の結果を総合し、2024年度中に脳オルガノイド研究のあり方に関する具体的な提言を行う。
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