2023 Fiscal Year Annual Research Report
1950-60年代日本の「文学と革命」をめぐる批評言説の変容と展開
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21K12922
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
木村 政樹 東海大学, 文学部, 講師 (90869679)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文学と革命 / 批評言説 / 文化運動 / 概念史 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、1950-60年代の「文学と革命」をめぐる批評言説についての調査を継続して行なった。また、その前段階の文脈を形作った戦前期の批評についても考察を続けている。なお、批評史研究の方法論についても考察を行なった。以上の3点はいずれも相互に関連するものであり、並行して進めていった。 その成果の一部は論文として発表した。「関東大震災前後と革命的知識人 有島武郎と日本共産党をめぐる一考察」(『現代思想』第51巻第10号、2023年8月)では、戦前期の革命的な知のトポグラフィーを、「野生の知」「実験室の知」という概念によって捉えることを試みた。また、「エピステモロジー的「批評」研究の〈対象/方法〉論」(『湘南文学』第59号、2024年3月)では、「エピステモロジー的「批評」研究」という方法論を提示するとともに、批評史研究のあり方について問題提起を行なった。 そのほか、有島武郎研究会没後100周年第73回全国大会で発表した「階級について語るとはいかなることか――有島武郎と平野謙をめぐって――」では、有島から平野の思想的系譜を論じることによって、戦前期からの文脈のなかで平野の戦後批評を位置づけることを試みた。また、『日本近代文学大事典』増補改訂デジタル版の項目執筆において、「饗庭孝男」「樋口覚」を担当した。 研究期間全体を通して、1950-60年代の批評言説、およびその前後の批評言説についていくつかの新しい知見を得ることができた。また、研究の途上で、批評史研究を行なうための方法論を論文化する必要が生じたため、研究方針を柔軟に変更しつつその新たな課題にも取り組んだ。今後の展開としては、引き続き批評史研究の方法論の構築を進めつつ、その視座から「文学と革命」をめぐる批評言説を捉え直すことを試みたい。
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