2021 Fiscal Year Research-status Report
後期読本ジャンルの確立と草双紙との関連についての研究-敵討物を中心に-
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21K12926
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
伊與田 麻里江 明治大学, 文学部, 助教 (40884549)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本近世文学 / 読本 / 黄表紙 / 曲亭馬琴 / 鶴屋喜右衛門 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、寛政十一年(1799)に刊行された『忠臣水滸伝』(山東京伝)を嚆矢として発展した読本と、同時期の草双紙の関係性を見極めつつ、読本の誕生・発展を改めて検討することを目的としたものである。検討にあたっては敵討を題材とした読本・草双紙を取り上げることとする。2021年度は、享和年間の読本・草双紙を対象として研究を進めた。当該年度は、特に、寛政から享和(1789~1803)の曲亭馬琴の敵討物草双紙について調査を進めた。 まず、馬琴作品の創作方法を調査し、実録体小説(以下「実録」)との関連を明らかにした。馬琴は、のちに、実録を摂取しつつ読本の創作を行なっており、敵討物草双紙の創作がのちの読本創作へ繋がるものであったことがわかる。また、実録を利用していない敵討物草双紙に関しても、構成などの点で読本との共通点が見て取れた。馬琴の敵討物草双紙は従来注目されておらず、その創作方法は調査されず、読本との関連も具体的に指摘されていなかった。本研究は、草双紙と読本の関連だけでなく、馬琴研究にも意味あるものとなったと考えている。 加えて、馬琴の敵討物草双紙を出版していた書肆鶴屋喜右衛門(以下「鶴喜」)の動向も調査した。鶴喜は天明七年(1787)に老中となった松平定信が断行した、寛政の改革の出版統制に対応するため、馬琴を独占し、自身の出版計画に沿った作品を創作させていたと思しい。敵討物草双紙もそうして創作されたものと推測される。この調査では、読本・草双紙の比較を進めるための前提として、読本誕生以前の敵討物草双紙の出版状況を明らかにしたが、江戸を代表する書肆であり、のちに読本の出版も精力的に行なう鶴喜の動向を考察することができたことも、今後の研究に繋がるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの流行によって、遠方の図書館、所蔵機関などに調査に行くことが難しかったため、書誌調査の遅れから研究が滞った。また、近隣の所蔵機関等の資料を利用して調査可能な内容を先んじて行なったため、研究計画よりも早く、調査に着手した課題もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、敵討を題材とした文化1年・2年(1804、1805)の読本・草双紙を対象に、比較研究を進める。草双紙は、特に影響力の大きかったと考えられる、南杣笑楚満人、曲亭馬琴、十返舎一九、山東京伝の作品を中心に分析を進める予定である。加えて、2021年度、研究の遅滞から進められなかった享和年間(1801~1803)の南杣笑楚満人作品の分析を行なう。2021年度調査予定であった、京都大学図書館等の所蔵資料も、同時に今年度調査する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行により、遠方の所蔵機関へ調査に行くことが難しく、また参加予定だった学会もオンラインとなったため、次年度使用額が発生した。調査予定だった京都大学等の所蔵機関には、2022年度に調査へ行く予定である。
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Research Products
(2 results)