2021 Fiscal Year Research-status Report
日本文学に描かれた捕虜(POW)の通史的研究:国際法とレイシズム問題を中心に
Project/Area Number |
21K12929
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金 ヨンロン 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (60806595)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 捕虜 / 国際法 / レイシズム / 法と文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究活動スタート支援「「法と文学」の基礎的研究:日本近現代文学のなかの戦争裁判」(課題番号:19K23052)に継続しつつ、日本文学に描かれた戦争捕虜(POW)にさらに焦点を当てて進めることを目的としている。日本文学描かれた捕虜を通志的に研究するにあたって、日本文学が国際法やレイシズム問題をどう取り上げているのかを重点的に研究する。したがって、研究成果は、前の研究課題の最終年度と時期的にも内容的にも重なる部分がある。今年度の最も重要な企画は、BC級裁判で特に問題になった捕虜への待遇や国際法の理解を、文学作品がどう描いたのかを研究するための第一歩として、2021年12月19日にシンポジウム『日本文学から考えるPOW・国際法・レイシズム』を開催したことである。このシンポジウムは、文学研究者のみならず、POW研究の専門家である内海愛子先生をコメンテーターとして迎えることができ、戦争捕虜を描いた文学が形成する主題のなか、とりわけ国際法への理解とレイシズムの問題がいかに重要であるかを再確認することができた。そこで概観的に「日本文学のなかの戦争捕虜」という題で研究発表も行い、今後の研究の基盤となるような問題意識を共有することができた。継続する課題としては、戦争責任や戦時性暴力といった問題を女性文学の観点から考える研究発表も二回行った。(「現代韓国の女性文学における歴史/法の担い手たち-李琴峰『彼岸花が咲く島』に触発されて-」 (『研究会:現代女性文学における法・制度への眼差し』)同志社大学烏丸キャンパス、 2021年9月6日 および、「沈黙を記載した現代史――キム・スム『聞き取りの時間』(2021)を中心に――(『第9回 東アジアと同時代日本語文学フォーラム』) 2021年10月16日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外出張や国際学会での発表がままならない中、zoomを用いた学会発表を行い、シンポジウムを開催したので、概ね順調に進めているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍において海外における研究調査が計画通り行えていない。本来なら、来年度は、オーストラリアに捕虜に関する手記を調査に行くのが予定されているが、難しい場合は、沖縄の捕虜(ハワイの捕虜収容所にいた)を調べに沖縄の出張を先行する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた海外(オーストラリア)・国内(沖縄)における調査がコロナ禍によって中断されたため、来年度に調査期間を変更する。
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