2021 Fiscal Year Research-status Report
ローベルト・ヴァルザーにおける「現実」と「虚構」の位置価
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21K12961
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
葛西 敬之 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (80820951)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ローベルト・ヴァルザー / 言語批判 / 言説分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
・2021年度は主に表現主義に関する理論的著作のほかに、『ディー・ヴァイセンブレッター』などの表現主義的雑誌を渉猟した上で、ローベルト・ヴァルザーのテクストとの関わりを分析した。その成果は国内学会で発表したが、そこでは、少数ながらヴァルザーを表現主義と結びつけるこれまでの諸研究を概観したのち、改めてヴァルザーのテクストにおける表現主義的な要素を検討し、そのうえでヴァルザーのテクストが表現主義とは異なる道へと進んでいることを、とくに作品集『詩人の生』所収の短編「労働者」の雑誌掲載時からの書き換えと同時代の表現主義および当時もっとも切迫した「現実」であった戦争に関連する言説を併せて分析した。現在はこの発表原稿をもとに論文化する作業を行っている。 ・また上述の作業とは別に「ドッペルゲンガーの恋―ローベルト・ヴァルザー『盗賊』と長編小説を書くということ」という題のもとで発表した論文において、ヴァルザーのテクストにおける語り手の「私」がとる位置の特異さについて論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は当初予定していた海外での調査を新型コロナウイルス感染状況を鑑み中止することを余儀なくされたため、資料収集に当初計画より時間を要した。それ以外の点に関してはおおむね順調に作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、前年度に発表したものを論文化するとともに、新即物主義をはじめとする文学における「現実」と「虚構」に関する言説を分析し、その成果を国内の学会などで発表する予定である。またこの間に1920年代のヴァルザーの遺稿を収める批判版全集が新たに刊行されたが、こうした一次資料も改めて再検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染状況を鑑みて、海外渡航を伴う文献資料調査を中止したため。 これについては感染状況に応じて、改めて海外渡航を行うか、それが困難と判断した場合は資料購入等に用いる。
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