2022 Fiscal Year Research-status Report
サハリンエウェンキ語の記述:サハリンにおける言語接触とその歴史的変遷の解明
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21K12975
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
BAEK SANGYUB 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (60788925)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ツングース諸語 / サハリンエウェンキー語 / 周辺言語 / 言語接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロシア・サハリン島への実地調査が不可能であったため、サハリンエウェンキー語を含むエウェンキー語方言の記述に関する文献資料整理をはじめ、エウェンキー語方言を中心としたツングース諸語における語彙借用の相違とツングース諸語の目的形式とその用法における相違に関する研究に取り組んだ。以下にその概要を示す。 ①ロシアの研究者によるエウェンキー語方言に関する記述を整理:20世紀にロシアで活発に行われていたエウェンキー語方言に関する研究資料を集め、音韻、形態、統語、語彙レベルでの類似点と相違点を整理した。 ②ツングース諸語の語彙借用における相違:エウェンキー語方言を中心に、ツングース諸語の語彙借用における周辺言語との接触の可能性に関する研究を実施した。その結果、ツングース諸語全体において、その地理的分布により、異なる借用語のパータン(北ツングース諸語<コリマ・ユカギール語、サハ語、ロシア語/東ツングース諸語<ロシア語、モンゴル諸語、中国語/南ツングース諸語<モンゴル諸語、中国語)が確認できた。また、エウェンキー語方言における語彙借用の相違についても指摘した。②の研究成果を2023年7月開催予定の韓国アルタイ学会開催のSIAC2013にて口頭発表予定。 ③ツングース諸語の目的形式とその用法における相違:ツングース諸語全体の目的節を構成する形式とその用法について考察を行った。その結果、ツングース諸語における目的形式とその用法が、ツングース諸語の地理的分布によって異なっていること(北ツングース諸語:目的副動詞、遠未来命令と意思の用法/東ツングース諸語:指定格起源の目的副動詞、意志用法/南ツングース諸語:目的後置詞)を明らかにした。同成果を「ツングース諸語の地理的分布による目的形式とその用法の相違」というタイトルで『北方言語研究』13号に投稿。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ロシアの情勢により、実地調査ができない状況が続いているが、入手可能な文献資料と未発表の研究資料に基づき、サハリンエウェンキー語に関する記述と周辺言語との接触の可能性について研究を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度も、ロシアサハリン島の実地調査は難しいと考えられるため、ロシア、日本、韓国の研究者によるエウェンキー語方言に関する文献資料に基づき、サハリンエウェンキー語の記述、エウェンキー語方言間の相違、周辺言語との言語接触の可能性に関する研究を実施する。 ①サハリンエウェンキー語の記述:サハリンエウェンキー語に関する文献資料(文法、テキスト)に基づき、音韻、形態、統語、語彙におけるサハリンエウェンキー語の仮記述を行う。 ②また、エウェンキー語方言における言語的特徴の相違とエウェンキー語方言におけるサハリンエウェンキ語の言語学的位置づけについて考察を行う。 ③さらに、アイヌ語をはじめとする周辺言語との接触の可能性についても考察を行う。 ④最後に、ツングース諸語の地理的分布による文法的相違と周辺言語との接触の可能性についても検討を継続する。
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Causes of Carryover |
ロシアによるウクライナ侵攻により、サハリン実地調査ができなかったため、旅費支出ができなかったため、支出額に変更が生じた。令和5年度に文献資料の収集と海外研究者との交流、学会発表のための旅費に活用する予定である。
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Research Products
(3 results)