2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of a Method for Analysing the Nature of Language Use of People with Autism Spectrum Disorders within Their Socio-cultural Context
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21K12978
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
合崎 京子 東京学芸大学, 教育学研究科, 日本学術振興会特別研究員PD (70867936)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / コミュニケーション / 語用 / コンテクスト / 社会文化 / 言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉症スペクトラム者(以下ASD者)の語用に影響する社会文化的コンテクスト要素の抽出と、成人ASD者の語用を可視化する分析手法の整備を行うことを目的としている。そのため、本研究では、日英のASD者を取り巻く社会環境のエスノグラフィーと成人ASD者へのインタビューと彼らの参与する日常会話をデータとし、言語人類学、会話分析、発達心理学の知見を用いた質的分析を行い、実際の日常会話及び会話参与者を取り巻くコンテクストをデータとする体系的な成人のASD者の語用の分析を試みる。 以上につき、2022度は、日本の当事者の語用について以前から実施していたASD者の語用に影響するコンテクスト要素と、実際の言語使用の関連性についての検討を行い、その成果となる学術論文を2023年3月発刊の「社会言語科学」に発表した。また、夏季には前年度から継続して行っている、英国でのフィールドワークを実施し、当事者の会話データの収録や英国の福祉政策についてのフィールドワークを行った。そこで得られた知見を東京学芸大学紀要及び、The 6th ESTIDIAで発表した。 また英国のASD当事者の語用について会話分析を行い、その分析結果をもとに、書籍Multimodal Approaches to Healthcare Communication Research: Visualising Interactions for Resilient healthcare in the UK and Japanの一章として執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度までは新型コロナウィルスの収束について見通しが立たなかったが、2022年度に入り、規制がだいぶ緩和されたため、夏季に英国に渡航しデータ収集を行った。また、当事者本人のみならず、当事者の保護者へもインタビューを行い、英国におけるASDを持つ児童への教育システムについてのヒアリングも実施することができたことが収穫である。 しかし一方で、ASD当事者のコミュニケーションの可視化という点については、倫理審査の進捗が捗々しくなく、特記すべき進展と呼べるほどには至らなかった。 また分析についても、オンラインミーティングの普及により、海外在住の研究者と頻繁に議論を交わす機会が増え、既に収集したデータの分析に集中して取り組むことができた。このようなオンライン環境の普及により、海外の学会にも日程の躊躇なく参加し、多く意見交換、また知見を獲得できた。 以上のように、進捗が見られた点、滞っている点、両側面はあるものの、相対的には、新規データの収集、フィールドワークの実施によって、ASD当事者のコミュニケーションを可視化するために有用であると思われる情報の蓄積ができたため、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度にできなかった収録済みの会話データに関し、倫理審査が終了次第、分析を加えたい。これによって、コミュニケーション可視化に向けたトランスクリプト表記法の検討を実施することを計画している。 また、これまで行ってきた、都内で活動している精神障害当事者会にも随時参加し、当事者の抱えるコミュニケーションに対する意識についての調査を継続したい。また、所属している浜松医科大学子どものこころの発達研究センターにても調査協力者を募集し、そこで参加同意を得られた協力者に、個人の生い立ちや社会的立場についてのライフストーリーインタビューと、実際の会話の収録ができるよう現在日程調整を行う予定である。これについては現在倫理審査の準備を進めている。 併せて2022年度に英国で収集したデータについては、2023年7月に国際語用論学会(IpRA)にてその分析結果を発表予定である。併せて論文化し、国際学術誌に投稿することも予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度は予定していた海外の学会参加が新型コロナウィルスの影響を受け実施できなかったこと、また日本国内においても、対面での会話やインタビューデータの収集及び、フィールドワークの実施への規制が多く、学会参加に関しても、ほぼオンライン開催となってしまったため、渡航費含む旅費、滞在費がほぼ使用できなかった。それに伴い、調査協力者に支払う謝金や、データの書き起こしなどが使用できなかった。
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