2021 Fiscal Year Research-status Report
現代中国語における〈禁止・制止〉表現の形成メカニズム
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21K12982
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中田 聡美 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (80783183)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 現代中国語 / 〈禁止・制止〉表現 / モダリティ / 主観性 / 文法化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は〈禁止・制止〉の意味を持たない語によって形成される〈禁止・制止〉表現の一つである“不帯X的”について、モダリティ及び主観性・間主観性の観点から研究を行った。“不帯X的”は方言から普通話(標準語)に取り入れられつつある文法形式であるが、普通話における用例を対象として、その形式の表すモーダルな意味をめぐって考察を行った。 “不帯X的”を認識的モダリティと束縛的モダリティの2つに分類し、それぞれ“不帯X的”の表す意味を示した上で、主に以下二点を明らかにした。(1)認識的モダリティとしての“不帯X的”の場合、Xは予期(非現実)であり、当該形式は話し手のXに対する態度を表す主観的表現である。(2)束縛的モダリティとしての“不帯X的”の場合、Xは事実(現実)であり、当該形式は話し手の聞き手に対する態度を表す間主観的表現である。 本研究課題の研究対象である〈禁止・制止〉表現は、束縛的モダリティとしての“不帯X的”が該当することになる。考察の過程では、現代中国語における代表的な〈禁止・制止〉表現である“不能VP”、“不可以VP”と“不帯X的”の違いについても言及し、〈禁止・制止〉表現としての“不帯X的”の持つ特性を示すことを試みた。 上記の研究成果は中国語論文「“不帯X的”的両種情態語義」(“不帯X的”の2つのモーダルな意味)として《世界漢語教学》青年学者論壇(第8届)に提出、入選論文となった。論壇にて口頭発表を行い、その際得られたコメントをもとに、現在論文の修正作業を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は〈禁止・制止〉表現としての“不VP”、“不帯X的”について、主に言語データの収集を行う予定であったが、“不帯X的”のデータが一定数収集できたため、2022年度に予定していたデータ分析及び研究発表を、2021年度のうちに行うことができた。一方、“不VP”のデータについては、まだ十分に収集できていないため、2022年度も継続して収集作業を行う必要がある。以上の理由により、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題で扱う言語現象(Ⅰ)〈禁止・制止〉としての“不VP”、(Ⅱ)〈禁止・制止〉としての“不帯X的”、(Ⅲ)〈禁止・制止〉としての“不敢VP”について、今後は以下のように研究を進める予定である。 2022年度は(Ⅰ)、(Ⅱ)の言語データを継続して収集しつつ、(Ⅰ)については収集したデータの分析を中心に行い、分析結果を学会等で発表する。(Ⅱ)については口頭での研究発表を行い、現在論文の修正作業を行っているため、2022年度中に論文を投稿する。(Ⅲ)については2022年度に中国で言語調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響により渡航は困難な状況であり、2022年度の現地調査は実施できないと予想されるため、予定を2023年度以降に変更せざるを得ない。 2023年度は(Ⅰ)については研究発表の内容を修正した上で、論文としてまとめ、投稿する。(Ⅲ)については中国での言語調査が実施可能な場合には調査を実施し、言語データを収集、分析する。 2024年度は(Ⅲ)のデータ分析の結果を学会等で発表し、可能であれば論文にまとめ、投稿する。また最終年度である2024年度は、本研究課題のまとめの作業も必要となる。(Ⅰ)~(Ⅲ)の考察を通じて得られた研究成果をもとに、形式が本来持つ意味から〈禁止・制止〉の意味へ拡張する過程は、現代中国語のモダリティ体系においてどのように位置づけられるのかを探り、その後の現代中国語のモダリティ体系に関する研究へ繋げていけるようにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、移動が制限され、支出(旅費)が0となったため、次年度使用額が生じている。今後新型コロナウイルス感染症の拡大状況を見つつ、国内外の学会等に対面で参加できるようになった場合には、支出(旅費)が増えると予測されるが、現時点では2022年度に予定していた中国での言語調査を2023年度以降に変更する予定であり、2022年度も支出(旅費)が当初の計画より抑えられる可能性がある。その場合には、一部を関連書籍及び言語データの購入にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)