2021 Fiscal Year Research-status Report
Perspective adoption in language comprehension: Developmental, cross-cultural, and cross-language aspects
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21K12989
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Research Institution | Niigata Seiryou University |
Principal Investigator |
新国 佳祐 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 助教 (60770500)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視点取得 / メンタルシミュレーション / 視点取得 / 共感性 / 事象認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主たる目的は、言語理解中に行われる事象のメンタルシミュレーションの仕方に、発達段階や母語、背景文化による違いが存在するかどうかを実証的に明らかにすることである。この目的の達成のため、本年度はまず、日本語を母語とする大人(大学生)を対象として、いくつかの実験を実施した。主なものとして、主語省略文理解時のメンタルシミュレーションにおける視点取得の個人差について、共感性との関連のもとに調べた実験がある。この実験では、主語つきの文脈(例:あなたは/山田さんはカフェラテを作っています。)とともに主語省略文(例:今、ミルクを注いでいるところです。)を呈示し、後続して呈示される写真刺激との一致判断を求めた。写真刺激は主語省略文中に記述される行為を行為者または観察者の視点から撮影したものであった。実験の結果、写真刺激への反応時間を分析したところ、共感性の低い参加者群には刺激写真への反応時間に文脈文の主語・写真の視点による顕著な差はみられなかったが、共感性の高い参加者は文脈文の主語が「あなた」の場合に行為者視点の写真への反応時間が短く、逆に文脈文の主語が人名の場合には行為者視点の写真への反応時間が短い傾向がみられた。この結果は、言語理解中のメンタルシミュレーションに際して、視点取得に語用論的な情報(文脈)を用いるかどうかは共感性の高低によって異なることを示すものであり、共感性と語用論的情報の利用との関連を示唆する先行研究の知見とも一致する。また、本実験の結果から、言語理解中のメンタルシミュレーションにおける視点取得の発達的変化は、共感性の発達が基盤となっている可能性を見出すことができた。これは、特に今後の発達段階に着目した研究の指針となりうる重要な仮説であり、次年度以降の研究によりその妥当性を検証することで、本研究課題の学術的価値をさらに高めることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期間終了までの本研究の計画は、1)日本語を母語とする成人、2)英語を母語とする成人、3)日本語を母語とする子どもをそれぞれ対象として、可能な限り同一の課題を用いた実験を実施することにより、言語理解中のメンタルシミュレーションにおける視点取得の様式に関する発達段階・母語・背景文化による個人差を明らかにすることである。その中で本年度は、1)の日本語を母語とする成人に関する基礎データを得ると同時に、2)の英語母語話者や3)の子どもと共通して実施可能な実験課題の開発を行うことにより、課題全体の最終的な目的の達成のための研究基盤を整えることを目標とした。進捗状況としては、日本語を母語とする成人についての基礎データの収集は、予定していた複数の実験が滞りなく実施できたことから順調に進展したと判断する。実験課題の開発についても、子どもを対象として実施可能な課題の作成を共同研究者との連携のもと進めており、次年度に実施の見通しが立っていることから、順調であると判断できる。一方で、英語母語話者を対象とする実験課題の考案についてはやや遅れており、最終年度までの研究全体の遂行のためには多少急ぐ必要がある。以上から、部分的には多少の遅れはみられるものの、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
子どもを対象とする実験の準備(実験刺激の作成、課題の決定、および参加者募集先機関との連絡調整)と実施を優先的に行い、2023年度内に必要分のデータ収集を完了させることを目指す。その際、今年度の研究成果によってその重要性が示された共感性の発達という視点を新たに取り入れ、測定変数として導入する。実験の対象としては、視点取得能力や共感性の諸側面が発達段階にあると考えられる小学校低学年の児童を予定している。それと並行して、英語母語話者(成人)を対象とする実験の準備(実験課題の検討、刺激の作成、予備実験等)を進める。なお、子どもを対象とする実験は、新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては2023年度内の完了が困難になる場合もありうる。その場合は、英語母語話者対象の実験を前倒しで実施する。英語母語話者を対象とした実験は、現時点ではWebを通した遠隔形式での実施を予定しているため、新型コロナウイルスの感染状況によらず実施可能な見込みである。また、2023年度からは随時、学会、論文、Webページ等によるこれまでの研究成果の公表を行う。
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Research Products
(9 results)