2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of semantic universals in the inferential domain
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21K12991
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
平山 裕人 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (10878292)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 推量表現 / 証拠性表現 / 法助動詞 / 形式意味論 / モダリティ / エビデンシャリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は推量法助動詞と証拠性表現の2つのカテゴリーを(1)時間的制約と(2)推量の形式の二つの観点から横断的に分析し、その意味の現れ方に一定の法則性を見出すことを目的としている。本年度は特に(1)の時間的制約について、以前に報告者が提案していたものよりも洗練された分析を提示することができた。 具体的には、Earliest(p)(推量法助動詞および証拠性表現のスコープ内にある命題(以下prejacent)が真になる一番最初の瞬間)とEAT(Evidence Acquisition Time、話者が発話の証拠となる情報を得た時間)の前後関係を推量表現が規定すると本研究の分析では規定しているが、prejacentがprogressive aspectを伴う際にEarliest(p)の出力が正しく得られないという問題点があった。これに対し報告者は、以前は可能世界の集合としての命題に向けて定義されていたEarliest演算子をevent predicateに向けて再定義し、それに合わせてaspectの意味論を設定することでEarliest演算子が正しい結果を出力することを保証した。 また、「推量表現が時間的制約をもつ場合、それはEATとEarliest(p)の前後関係で規定される」という本研究の仮説に対する潜在的な問題点として、Smirnova (2013)やLee (2013)で別の種類の時間的制約が証拠性表現に対して提案されているというものがあったが、Speas (2019)やArregui et al. (2017)などの文献を参照し、これらの時間的制約は証拠性表現の意味論によって直接もたらされるものではないというサポートを得ることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄で記したように、特に時間的制約の点で本研究はおおむね順調に発展していると言える。progressive aspectの問題を解決したEarliest演算子を提案したことや、Smirnova (2013)などで本研究の分析とは異なる時間的制約が提案されているという問題への対応など、本研究の分析は着実に洗練されていると言うことができる。また、apparently, seem, 「ようだ」, リルエット語の証拠性表現-an, should, ドイツ語の法助動詞sollteなどの推量表現の意味にEarliest(p)とEATの前後関係の指定が含まれているという趣旨の論文をJournal of Pragmaticsから出版することもできた。その出版過程で査読者から分析の改善点に関するコメントも頂戴している。 本研究のもう一つの観点である「推量の形式」に関しては現時点では本格的に着手することはできていないが、こちらについては2年目に調査・分析を始める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」欄で述べたように、現時点では本研究の2つ目の観点である「推量の形式」には本格的に着手できていない。よって今後は「推量表現が推量の形態に制約をもつ場合、その制約は、証拠となる命題とprejacentの間の反事実文的関係で規定される」という仮説が本当に妥当であるか、また、妥当である場合、どのようにしてそういった反事実文的関係を形式化するか、といった点を探求する。 より具体的にいうと、前者の点に関してはデータ収集を行う。日本語のデータについては報告者の内省と日本語ネイティブ話者とのインタビューを通して、英語のデータについては報告者と密に連絡を取り合っている英語母語話者とのインタビューを通して、それぞれ仮説と合致しない例が存在しないかを確認する。 後者の点に関しては、まずStarr (2019)による反事実文の分析の概観に目を通し、そこから研究史をたどることで反事実文に関する知見を得る。その後、得られた知見を用いて推量表現の意味における推量の形式に関する制約を形式化する。
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Causes of Carryover |
本年度は国際学会での発表も予定していたが、コロナ禍でオンライン開催ということにもなり予定通りの予算執行ができなかった。 次年度の国際学会は現地開催のところも多くあるので、そちらの旅費に充てたいと考えている。
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