2021 Fiscal Year Research-status Report
文脈から予測する単語の形態・音韻の想起メカニズムの解明
Project/Area Number |
21K12994
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊 可欣 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (70823483)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 漢字熟語 / 予測 / 個人差 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、文脈をともなう語の予測における語の形態情報と音韻情報がいかに想起されるか、そしてそれに影響する読み手の特性を明らかにすることにより、言語習得と言語支援に貢献することである。この目的を達成するために、本研究は5年間をかけて以下の計画で進めていく予定である。初年度は、刺激作成のために事前調査を行う。2年度目から、脳波計測装置を用いて文脈から語を予測する際の脳波を測定し、形態情報と音韻情報の想起に応じた意識下の反応を検討する。そして、眼球運動計測装置を用いて若年者と高齢者の注視行動を計測し、語の形態情報と音韻情報の想起に影響する個々の読み手の特性を検討する。 本年度は初年度(令和3年度)であり、予定の通り、類似する漢字ペアを抽出し、脳波・視線計測実験のための刺激材料を作成した。そして、その字体類似度を漢字知識のない外国人と日本語母語話者に評定してもらい、漢字ペア選定の妥当性および漢字知識の有無という言語経験が字体類似の知覚に与える影響を検討した。その結果、漢字知識の有無にかかわらず、抽出された漢字ペアのうち、音符を共有する字(「線/腺」)の類似度がもっとも高く、意符を共有するもの(「線/絹」)の類似度は音符を共有する字よりも低いものの、無関係の漢字ペア(「線/努」)よりは高かった。刺激材料としての漢字ペアの選定が有効であることを示している。また、日本人は漢字知識のない外国人に比べて、音符・意符を共有する字の字体類似度をより高く、無関係の字をより低く評定した。字体類似度の評定は漢字の音韻・意味の知覚を要しないにもかかわらず、漢字知識に影響されることが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、今後の脳波・視線計測実験の刺激材料を作成した。字体が類似する漢字ペアを選定し、その類似度を漢字知識をもたない外国人と日本語母語話者に評定してもらった。予定していた計画通りに進めていたので、研究の進捗状況としては概ね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度で脳波実験を行うことを予定していた。ただし、新年度は海外派遣でアメリカで1年間滞在することとなった。また、脳波実験では実験者と実験参加者が密接することになるので、コロナ感染状況によって実施できない可能性がある。したがって、新年度では日本で脳波実験を行うことができるかどうかまだ不明である。その対策として、オンラインでの行動実験を計画している。
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Causes of Carryover |
コロナ感染防止のために、旅行を控えていたので、当初予定していた国内旅費の支出はなかった。また、同様な理由で、事前調査をすべてオンラインのプラットフォーム(crowdworksやprolific)で行ったため、当初予定していた支出よりも少ない費用で実施できた。その分の費用をその他(オンラインの実験参加者への謝金など)に補充する予定である。
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