2022 Fiscal Year Research-status Report
A formal approach to the semantics and syntax of speech acts in natural language
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21K13000
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井原 駿 神戸大学, 国際文化学研究科, 助教 (90898032)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 形式意味論 / 語用論 / 発話行為 / 感嘆文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究対象となる発話行為のうちの一つである感嘆文の研究に焦点をあて、その言語的振る舞いの記述と、それに並行して形式意味論的分析を推し進めた。 特に、日本語の感嘆文は生起する文末表現によって複数の形式から構成が可能であるものの(「コト」「ダロウ(カ)」など)、記述的な研究を含めて先行研究が少なく、言語事実に基づいた理論的な研究は2000年以降の統語論の研究など一部を除き殆ど報告されていない。 本年度は、典型的な日本語感嘆文のうち「ナンテ…ノダロウ」感嘆文の振る舞いを、(i) 疑問文への回答としての適切性、(ii) 文末イントネーションのバリエーション、(iii) 特定の終助詞とのインタラクション、(iv) 対比の「ハ」との親和性、(v) 聞き手による挑戦の可否の観点から観察・記述を試みた。 分析にはFarkas & Bruce (2010) によるTable-stackモデルと呼ばれる談話モデルを採用し、ノダロウ感嘆文は (1) 話し手のコミットメントとして命題への驚きの態度を表出しつつ、(2)議論中の話題を表す談話のテーブル (Table) には命題のみを追加するという語用論的な効果をもたらすことを提案した。これにより、先の(i)-(v)の振る舞いを統一的に捉えることに成功した。理論的には、これまでの感嘆文研究における主要な争点の一つである「感嘆文はそれ自体で独立の発話行為であるのか、それとも、主張行為 (assertions) の一つなのか」という問いに、前者を支持するものとして貢献した。 なお、本研究成果は、Evidence-based Linguistics Workshop 2022、International Semantics Conference 2022で報告し、John BenjaminもしくはSpringerから出版される論文集に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、研究計画を立てた当初念頭に置いていなかった成果を得ることができた。具体的には、日本語の感嘆文が、それと関連する様々な言語現象とインタラクションを起こし得ることを発見することができ、日本語における意味論研究の記述的な側面を大きく推し進めた。記述と分析において一定の成果を得ることができたものの、そもそも「なぜ」感嘆文が本研究で提案したような語用論的振る舞いを示すのかという原理的な説明への糸口は未だつかめておらず、その点において現在までの進捗状況を (2) と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き「ナンテ…ノダロウ」感嘆文の分析を推し進める。具体的には、この構文が感嘆(=「驚き」)の意味を表出するメカニズムを明らかにするために、「ナンテ」「ノ」「ダロウ」それぞれの意味から構成的 (compositional) に分析する手法を検討する。また、他の形式の感嘆文、例えば「ナンテ...コト」感嘆文や、裸の文や名詞のみから表出される感嘆文について、「ナンテ…ノダロウ」感嘆文との比較を通じて分析する。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウイルスの拡大の影響により、当初現地開催を予定していた国内学会および国際学会がZoomによるオンライン開催となったため、使用予定額を下回る支出となった。
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Research Products
(6 results)