2021 Fiscal Year Research-status Report
A Contrastive Study on Aspectuality and Actionality in Contemporary Slavic Languages
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21K13004
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岡野 要 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (40828050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 対照言語学 / アスペクト / 動作様態 / 文法化 / スラヴ諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により引き続き海外渡航ができなかったため、日本から入手可能な文献を中心に調査を行った。まず、スラヴ語学および一般言語学におけるアスペクト研究で、アスペクト的意味と行為的意味(動作様態)がどのように扱われてきたかを検討し、今後の研究のための土台作りを行った。とくに〈開始〉、〈継続〉、〈終結〉という位相の3つの基本的意味がスラヴ語学でどのように研究されてきたかを調査し、その手法と対象についてまとめた。もともと位相動詞として用いられる語彙に加えて、語彙動詞が位相的意味を表すマーカーへと発達した2次的な位相動詞があるが、文法書などではこれらを区別していても、これらの表現がどの程度一般的なのか、表現間の意味の違いなどにはほとんど触れられていないため、これらがアスペクト研究の分野でどのように取り上げられてきたかについて調査を行い、今度どのような角度から研究していくかを吟味した。 また、事例研究として、セルビア語学でこれまであまり注目されていなかった開始表現を取り上げ、ほかの開始表現との意味や事態把握の違いや文法化の度合いといった観点から分析を行った。この研究の成果の一部は、8月に開催されたICCEESモントリオール大会(オンライン開催)での報告として発表し、近いうちに論文としてまとめ直す予定である。今後は同じ開始表現のうちまだ分析のできていないものを分析し、〈開始〉の機能意味野が言語にどのように表現されるかを記述したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度もCOVID-19の影響を受け、現地に渡航できないほか、研究者間の交流がオンラインに限定されてしまうという状態が続いているが、2022年度以降は渡航が再開される見込みであるため、それに向けて研究計画を見直している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、大きく分けて2つの問題に取り組みたいと考えている。 1つ目は、セルビア語をはじめとする南スラヴ語における位相動詞の分析である。南スラヴ語には、同じ語源を持つ語彙動詞が位相動詞として機能するという現象が共通して見られるが、それぞれの言語においてこういった動詞の使用がどの程度文法化されているかについてはほとんど研究されていない。また、いくつかの言語で、語源は異なっているが、同じ意味を持つ語彙動詞が位相動詞になる例も確認されるため、こういった現象がどの程度の地域的連続性を持つのかについても調査を進めたいと考えている。 2つ目は、スラヴ系少数言語であるルシン語の開始表現の記述と分析である。ルシン語はこれまで、言語の系統や社会言語学的観点から多くの研究がなされているが、アスペクトのような言語内部の体系を論じた研究の数は少なく、本来的な位相動詞以外に文法化された形式があるのかもまったく知られていない。2022年度は標準化が最も早かったヴォイヴォディナ変種と比較的最近標準化されたハンガリー変種の言語資料を調査し、ルシン語における位相表現の研究のための土台作りを行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度は、当初予定していた国外・国内出張がCOVID-19の影響で中止またはオンライン開催となったため、旅費を使う機会がなく、一部を図書や物品の購入にあてた。また、論文校正のために謝金を計上していたが、論文の完成が遅れたため、この分の予算を消化できずに2022年度に繰り越した。2022年度は海外渡航が可能になるほか、論文を数本英文で刊行する予定になっているため、2021年度分の残りと2022年度分を予定通り消化できると見込んでいる。
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Research Products
(1 results)