2022 Fiscal Year Research-status Report
A Contrastive Study on Aspectuality and Actionality in Contemporary Slavic Languages
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21K13004
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岡野 要 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40828050)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 意味論 / アスペクト論 / 動詞 / 歴史意味論 / 文法化 / 統語論 / 意味変化 / アスペクチュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は引き続き南スラヴ諸語のアスペクト的意味を表す動詞の文法化について調査を進めた。具体的には、セルビア語の動詞krenuti「動く、出発する」、stati「なる」そしてuzeti「取る」が後ろに動詞を取る構造で「~し始める」を表す場合の条件を動詞の意味クラスとアスペクト的意味の特徴から分析した。現代語における状況はある程度明らかになってきたが、これらの動詞がなぜ開始を表す位相動詞化したのか、すなわち位相動詞としての使用を動機づける意味的・統語的要因の解明がまだ完了しておらず、今後はこれまで扱ってきた現代語資料(20世紀以降の資料)だけでなく、19世紀以前の言語資料を分析することで、文法化プロセスの流れを記述し、理論と照合していく予定である。 2次的な位相動詞の研究と並行して、ヴォイヴォディナ・ルシン語の移動動詞と知覚動詞の意味についても考察を進め、ほかのスラヴ諸語と対照しながら語彙の体系性およびアスペクト的意味を中心に分析を進めた。中でも今年度は聴覚動詞の意味の発達を調査し、これまで文法書や先行研究で詳しく記述されていなかった「be動詞+chuc(聞こえる)の動詞不定形」の構造で「(声・音などが)聞こえる・聞くことができる」を表す特殊な構文について個別言語およびスラヴ諸語の類型の観点から分析を行った。ヴォイヴォディナ・ルシン語ではこの構文は「聞こえる」を表す動詞以外を取らない慣用表現的なものとされていたが、実際にはpoznac「知る」やprepoznac「認識する」といったほかの知覚動詞をbe動詞と組み合わせて可能の意味を表す用例が見つかった。こうした実態を記述することで、ヴォイヴォディナ・ルシン語がチェコ語やスロヴァキア語、ウクライナ語と共通する「be動詞+知覚動詞原形」構文を持つこと、そしてそれがそれほど生産性はないものの一定頻度用いられることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はヴォイヴォディナ・ルシン語にかんする国際会議の開催や論集・雑誌の刊行が連続したため、ルシン語を対象とした研究に時間を取られてしまい、南スラヴ諸語における位相動詞の文法化にかんする研究があまり進んでおらず、研究成果の発表が当初の予定よりも遅れている。2023年度は南スラヴ諸語の事例研究を進め、論文として研究成果を発表したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、現在進行中の南スラヴ諸語の開始を表す2次的位相動詞について文法化理論および通時的な観点から研究を進める予定である。現代語における状態だけでなく、文法化がどの時点で何に動機づけられて生じたかを調査することで、この現象の全体像を包括的に捉えたいと考えている。また、開始相以外のアスペクト的意味についても調査を進め、アスペクト指標の文法化がどの程度見られるか明らかにしたいと考えている。 また、移動や知覚といった語彙クラスに属する動詞がどのようなアスペクト的特性を見せるかについても、接頭辞付加や語彙的意味との関係を中心に調査していく予定である。 2024年度以降は継続相や終結相といったほかの位相的意味の分析を進めるとともに、現時点で着手できていない副詞の表すアスペクト的意味の対照言語学的分析にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は燃料費の高騰およびウクライナ情勢の影響により予定していた渡航を2回から1回へと変更したため、余剰が生じた。この分は2023年度分と合わせることで、国際会議参加および現地調査のための旅費として執行する計画である。
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Research Products
(3 results)