2021 Fiscal Year Research-status Report
日本語の動詞句内に起こる副詞的表現に対する描写語としての記述及び心理言語学的実証
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21K13016
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
難波 えみ 岡山大学, グローバル人材育成院, 特任講師 (30842819)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 主語描写 / 指向性 / 評価 / 話し手の意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究課題の基礎的基盤となる描写、指向性の規定に取り組んだ。対象として観察を進められたのは、様態の規定と主語に対する描写語のみで、目的語に対する描写語の観察・分析に関しては、年度内に手を付けることができなかった。 描写については、形容詞や形容動詞の語彙的な性質が主語や目的語を描写する副詞的表現となったとき、語本来の性質がどのようになるのかをさまざまなテストフレームを用い考察した。 描写語としての成立・不成立には、時間的限定性という時間的性質が関わっていることが分かった。また、描写語は発話時における客観的な状態であるだけでなく、話し手の評価性とも関わっていることが明らかになった。本研究課題で対象としている副詞的表現は、形容詞・形容動詞の連用形である。これらの語彙的な性質は、述語となる動詞の動的な性質と対立しない範囲において維持されるのではないかと考えられる。 また、描写語と深くかかわる主語や目的語に対する指向性の規定については、今年度は十分に考察を深められなかった。指向性そのものが従来の研究では、管見の限り、細かく検討・定義されていないため、様々な文献や用例を見ながら、指向性の定義や描写語との関連を思索した。指向性の検討については、現段階では、話し手の意識の方向性が関わっていると考えているが、緻密に規定できる余地がある。来年度以降も引き続き、指向性の検討を続けていく予定である。 最後に、本年度は、本研究課題で対象とする描写を表す語の多数を占める形容詞の研究についても理解を深める必要性を感じ、日本語および英語を対象とした形容詞研究も収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍や勤務校のやむを得ない事情により、業務量が大幅に増えたことが最大の理由である。他にも、当初計画していたことを実行する前に、理論的な基盤の整理の必要性を感じたため、そちらを先に検討した。今後の研究で重要な作業であるため、当初予定していた計画の進捗にも影響を与えることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(令和4年度)は、主語に対する描写、目的語に対する描写、様態の3種類の副詞的表現について、2つの調査を行いたいと考えている。まずは、作文課題によるアンケートで、先述の3種の副詞的表現がどこに置かれるのか、文中の分布の違いを調査したいと考えている。主語に対する描写は主語の後、目的語に対する描写は目的語の後、様態の副詞的表現は目的語の前後にランダムに分布すると仮説を立て、それを確かめたい。 もう一つも描写に関する作文課題で、こちらでは、写真又はビデオを協力者に見せ、単文で簡潔に上述してもらう予定である。ある出来事に対して、何に/どのような要素に注目して描写するのか、そして、どのような文法的手段により描写が言語化するのかを調査したいと考えている。
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Causes of Carryover |
購入を希望していた書籍が納入に時間を要することが分かり、年度内に会計手続きが完了しないため、キャンセルしたことによる。
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Research Products
(1 results)