2022 Fiscal Year Research-status Report
Projection-free Merge and Movement Phenomena: Problems and Solutions
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21K13024
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
田中 秀治 三重大学, 高等教育デザイン・推進機構, 特任講師(教育担当) (90779381)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生成文法 / 統語論 / 併合 / 投射 / 移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前年度に引き続き、投射なしの併合操作を前提として「移動の問題」に取り組んだ。これは「投射なしの統語理論で移動を正しく制限するためにはどうすれば良いか」という問題で、本年度はさらに具体化して「移動に対する句性効果(phrasality effect)と優位性効果(superiority effect)を統一的に捉えるためにはどうすれば良いか」という問題を論じている。この問題を解決するために、前年度に提案した「併合操作の片方の入力要素内で素性照合が起きている場合、もう片方の入力要素もその素性を含む必要がある」という主旨の「照合探索条件」をさらに改良した。この改良版は、先行研究にとって問題となる「所有名詞の移動」と「等位接続された名詞の移動」も正しく制限できるため、さらに精緻化することで先行研究の提案よりも妥当なものになる可能性があることを主張した。 以上の研究成果は、その一部を Encouraging Workshop on Formal Linguistics 8(2023年3月28日)で口頭発表した後、全体の内容を載せた論文を国際ジャーナルに投稿して、現在は査読中である。さらに、「移動」に関連する研究として「英語の遊離数量詞の分布」を再考した単独研究を West Coast Conference on Formal Linguistics 40(2022年5月14日)で口頭発表し、また「日本語のかき混ぜ構文の性質」を再考した共同研究を Workshop on Altaic Formal Linguistics 16(2022年10月1日)で口頭発表した。他にも、投射なしの統語理論を前提にして「日本語の語彙的複合動詞の意味論」を再考し、その成果を日本言語学会第155回大会(2022年11月13日)で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
区分の理由は、「投射という概念なしでどうやって移動現象を正確に捉えるのか」という本研究の最大の問いに対して、妥当な提案を完成させる段階に入ったと評価できるからである。特に、本研究の最初の目的は、「XP移動の問題」と「X0移動の問題」に加えて、中間投射X'に関する「X'移動の問題」を論じることだったが、その問題を全て扱った論文を国際ジャーナルに投稿して現在は査読を受けているという点で、進捗状況はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、国際ジャーナルに投稿した論文の査読結果を受け取った後、その内容に基づいて本研究の提案を改善していき、その論文が年度中に採択されることを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2022年度に国際ジャーナルに投稿した論文が現在査読中で、その結果に応じて論文を修正する際に使用する研究費を残しておく必要があったためである。次年度では、その研究費を主に論文修正のために使用し、特にその修正の際に必要となる関連図書の購入やアンケート調査の費用として使用する計画にしている。
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