2021 Fiscal Year Research-status Report
pair-Mergeに関する理論的および実証的研究
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21K13025
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大塚 知昇 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (20757273)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生成文法 / Minimalist Program / pair-Merge / Free Merger |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、生成文法Minimalist Programにおける現在最新のPhase理論の枠組みのもと、1. pair-Mergeは独立した操作として存在し、2. Free Mergerに組み込まれると主張し、枠組のさらなる発展に貢献することである。 本研究は、理論的目標と経験的目標、二つの観点から進めていくこととしている。まず理論的目標として、pair-Mergeのメカニズムを明らかにする必要がある。今年度は日本におけるMinimalist Programの理論研究をリードしているといえる慶應義塾大学が開催する研究会にも複数回参加し、理論的研究を進めた。なお、コロナ禍の現状により、研究会の開催がオンラインとなったため、出張旅費は発生しなかった。 経験的目標としては、諸言語現象を通言語的に調査し、先行研究において十分な説明が得られていない現象を、pair-Mergeを用いて説明することを目指している。今年度は特に、文左周辺部の現象をpair-Mergeの観点から導くことに注目し、日本英文学会九州支部での発表を行った。なおその際、学会の開催はオンラインだったため出張旅費は発生しなかった。その他には過去に行ってきたpair-Mergeに関する研究の再分析、統合を行い、それに基づき現在査読中の論文が2本存在する。 なお、今年度発表された、生成文法の考案者であるNoam Chomsky氏のChomsky (2021)においても、pair-Mergeに関する考察が登場した。その意味でも本研究は近年の生成文法の研究において重要なトピックについて扱っていることが裏付けられていると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題については、理論的研究、経験的研究どちらについても、比較的順調に進展しているといえる。 今年度の研究では、日本英文学会九州支部第74回大会において、文左周辺部の分析をpair-Mergeの観点から導き出す試みを行った。本研究はProceedingsにもまとめられた。今年度に形となった業績自体は、本研究に関わるものとしては以上となるが、本研究テーマのもとに現在査読中の論文が2本存在する。そのうち1本は一度の書き直し期間を経て再査読中である。 また、当該の科研費を獲得する以前から行っていた過去の研究についても、最新の形で再分析、統合を試みており、これらについては、現在進めている研究を組み合わせてそれなりの規模になりつつある。本科研費研究の期間中に、図書の形で発表できることを目標に今後の研究も進めて行く所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については、基本的には今後も現状の形を維持していく方針である。 理論的研究については今後も慶應義塾大学で開催の研究会をはじめとし、様々な研究会、学会に参加することでさらに理解を深めていきたい。特に最新のChomsky (2021)のpair-Mergeに関する考察は非常に重要であり、新たに議論されているForm Sequenceとの関係性については今後特に焦点をあてたい。なお、次年度には当該のテーマである「pair-MergeとForm Sequence」について日本英文学会全国大会にてシンポジアムを開催する予定である。 一方の経験的研究については、pair-Mergeをもとに分析できそうな通言語的な現象が比較的広範囲にわたり集まってきている。今後も続けて「項的な付加詞」や「付加詞的な項」の発見、分析を進めつつ、これまでの研究成果をまとめる試みも進めて行きたい。そして行く行くは図書として成果をまとめることも視野に入れたい。
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Causes of Carryover |
今年度においては、多くの研究会、学会がオンライン開催となり、出張旅費が一切発生しなかった。また、物品の購入等に関わる科研費の使用も最小限となった。 一方で、科研費交付決定前からの研究の成果も含め、研究活動自体は比較的順調に進んでおり、一定の量の研究成果が得られている。これらの状況に鑑み、次年度においては、次年度使用額を含めて翌年度分の助成金と合わせ、最終的には図書の出版に向け、英文校閲費、その他関係する費用として活用していく計画である。
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Research Products
(2 results)