2021 Fiscal Year Research-status Report
包括的な音韻現象分析に基づく統語構造から音韻表示への写像の解明
Project/Area Number |
21K13026
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 章吾 弘前学院大学, 文学部, 講師 (40883674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 線形化 / 経済性条件 / string-vacuous movement / コピー削除 / 省略 / 接辞付加 / 音韻句形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、統語構造を音韻部門へ送る排出という過程について明らかにすることである。具体的には、排出が言語構造構築後に一度だけ起こるのか、言語構造構築中に段階的に起こるのかを明確にすることを試みる。本研究では、便宜上、前者の排出を表示的排出と呼び、後者の排出を派生的排出と呼ぶ。この目的を達成するため、本研究では、これまで独立して研究されていた様々な音韻現象を包括的に調査し、一貫した外在化の理論を構築することを目指す。 2021年度は、様々な音韻現象のデータを収集し、整理しながら、表示的排出と派生的排出の妥当性を検証した。この研究成果は下記のように発表されている。 まず、英語の右方移動構文に課せられる制限に対して、「移動は段階的に線形順序を変化させなければならない」という経済性条件の観点から説明を与える研究を行った。この研究成果は、日本英語学会第39回大会の研究発表、JELS39号の論文、『ことばの様相―現在と未来をつなぐ―』に収録された論文で発表されている。本研究では、線形化が段階的に起こる一方、コピー削除が段階的に起こらないことを示唆している。また、右方移動と関連する省略現象にも分析を拡張し、省略もまた段階的に起こることを示唆している。さらに、一部残った問題については、北海道理論言語学研究会第14回大会の研究発表で解決を試みた。 他には、コピー削除、線形化、接辞付加、音韻句形成の相対的適用順序を明らかにする研究も行った。この研究成果は、日本英語英文学会第31回大会の研究発表で発表されている。本研究では、様々な音韻過程の相互作用から、各音韻過程の適用順序を考察した。その結果、一部矛盾する事実が観察されたが、コピー削除が2回のタイミングで適用されると提案することにより説明を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、様々な音韻現象を包括的に研究する基盤をつくるため、複数の音韻現象の調査やその整理を研究の中心に設定していた。そして実際に複数の音韻現象を調査すると共に、音韻過程の相互作用に着目することで音韻過程の整理をすることにも成功している。その結果、派生的排出の妥当性を支持する調査結果が多くみられ、この排出プロセスの妥当性が高いことを示唆する結果になった。 しかし、まだ十分に調査・検討できていない音韻現象も存在しており、その調査が2021年度の研究成果と整合するか否かは分からない。 これらの点により、自身の研究を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、複数の音韻現象を包括する一貫した排出理論の提案を目標とする。まず第1段階として、先行研究で提案された排出理論を検討し、それらを統合したり修正したりする形で包括的な理論構築を試みる。この試みがうまくいかなかった場合は、研究の第2段階として、独自の排出理論の構築を行う。また、調査の過程で、2021年度十分な調査ができなかった音韻現象を積極的に取り込むことを試みる。 調査結果は研究発表や論文の形で発表し、他の研究者から意見をもらうことでより精度の高い調査・検討を行うように努力する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、新型コロナの影響で研究打合せや学会がオンラインになったことにより旅費などが必要なくなったことが挙げられる。 次年度以降の研究打合せや学会への参加、研究資料の購入などに充てることを予定している。
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