複言語・複文化環境で育つ子どもの学びを支える二言語能力の発達と支援

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K13038
• Research Institution: Osaka Kyoiku University
• Principal Investigator: 米澤 千昌 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (60880622)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2027-03-31
• Keywords: 複言語・複文化環境で育つ子ども / 二言語能力 / 対話型アセスメント / 言語発達 / 支援方法

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、（１）複言語・複文化環境で育つ子どもたちの学びや成長を支える言語能力の発達（特に、自分の意見を伝える産出能力）の実態を探ること、（２）その力を育成するための支援のあり方を探ること、である。
（１）については、「外国人児童生徒のための対話型アセスメントDLA」（文部科学省2014）を用いて、二言語能力の測定を横断的に行う予定であったが、令和3年度はコロナ感染症の拡大や3ヶ月間の産前産後休暇・育児休業の取得により、予定よりも少ない10名の子どものみへの実施となった。しかしその中で、DLAの結果とともに今後の支援方法の助言をすることで、日本語加配教員の意識が大きく変化する様子を観察することができ、また現場もそれを望んでいることが明らかになった。現場での実践の変化と子どもの二言語能力の変化を探ることが本研究の目的（２）の重要なデータとなることや、社会貢献という観点からも、ある特定の学校をフィールドに縦断的にDLAを実施した方が良いと考え、令和3年度は、①実践についてのアンケート調査、②DLA実施、③DLAの結果の報告および支援に向けた助言、④DLA後の実践の変化を探る、という実践と子どもの変化の両方を捉える体制作りを行った。さらに、教員向けの研修も実施した。
（２）については、年に1度のDLAだけでなく、学期ごとに支援現場への参与観察や日本語加配教員、担任へのインタビューを行い、アクションリサーチを行う予定であったが、上述の理由により、3学期のみ参与観察と日本語加配教員へのインタビューを実施した。しかし、その中で、在籍学級との連携、学校全体での多文化理解教育、日本語教室での教員と子どもたちとの対話が、成功要因として大きな役割を果たしていることに気が付いた。そのため、今後は、この3点に注目しながら、引き続きデータの収集を行っていく。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

3ヶ月間の研究中断、およびコロナウイルス感染症の拡大により、フィールド調査の実施が難しい状況が続いた。（１）のDLAによる二言語能力調査は一部、オンラインでの実施も試みたが、オンラインで対応可能なフィールド確保や日程の調整が思うように進まず、予定よりも少ない人数への実施に止まった。（２）のアクションリサーチについても、フィールド訪問が可能な時期と研究協力校との予定が合わず、3学期に1回フィールド調査を行うことしかできなかった。

Strategy for Future Research Activity

当初の予定では、（１）については、横断的にDLAを実施しデータを収集する予定であったが、目的を達成する上でより有用であると考えられるため、今後は現在すでに協力の同意を得ている学校をフィールドに縦断的にデータを収集していく。同時に、日本語指導を担当している教員や学級担任へのインタビュー調査も実施し、実践と子どもの変化の両方を観察していく。（２）については、学期に1回のフィールド調査を行い、継続してアクションリサーチを進めていく。

Causes of Carryover

産前産後休暇・育児休業の取得により、3ヶ月間研究を中断していたこと、およびコロナ禍でフィールド訪問が難しかったことから、予定していたよりもデータの収集ができなかった。そのため、アセスメント実施やそのデータの文字起こし作業、翻訳作業に係る人件費を中心に未使用額が生じた。
令和4年度は、すでにアセスメントを実施する対象児童の確保やフィールド調査に向けてのスケジューリングもできており、万一、アセスメントが対面で実施できなくなった場合にはオンラインで実施することで、予定通りの人数に対してアセスメントを実施し、データ収集、およびデータの整理を行っていく。