2023 Fiscal Year Annual Research Report
Japanese as a Heritage Language Education in Small Groups of Overseas Japanese Communities
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21K13041
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
谷口 ジョイ 静岡理工科大学, 情報学部, 准教授 (80739201)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 継承語 / 日系コミュニティ / 日本語教育 / 海外子女 / バイリンガリズム / バイリテラシー / 質的研究 / 研究方法論 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外に居住する「日本にルーツをもつ子どもたち」が、継承語としての日本語を学ぶ場としては、家庭、日本人学校、週末補習校のほか、保護者によって運営される小規模な学習コミュニティが挙げられる。しかし、公的資金の投入されない組織・集団については、その実態が不明であった。本研究では、(1) なぜ保護者が、継承語学習の場として、こうしたコミュニティを選択するのか、(2) 何を目的として参加し、子どもに何を継承させたいと考えているのか、(3)コミュニティ内で、どのような言語実践が見られるのか、という点について調査を実施した。 調査対象は、アラブ首長国連合(UAE)のドバイ、韓国のソウル、オーストラリアのメルボルンで活動する複数の継承語学習コミュニティである。参与観察、および、フォーカスグループ・インタビューにより収集したデータ・セットを縮減することで、「パターン化された反応や意味」を見出すという手法を用いて、私的な「家庭」という空間と、公的な「学校」という空間の狭間にある共同体を特徴づけるさまざまな事象について検討を加えた。 調査の結果、継承語学習コミュニティに参加する日本人の保護者が、「日本語の継承」という行為にどのような意味を見出し、何を継承することを望んでいるのかは、社会構造と密接に結びついた(situated)ものであることが明らかとなった。例えば、人的流動性が極めて高く、一時滞在の外国人居住者が人口の90%以上を占めるドバイのような特殊な環境においては、言語能力のみならず、日本の学校教育において形成されるスクリプト(ある特定の場所や時間にふさわしい行為や言語表現の系列)をどのように伸長させていくかに注力し、教育活動を行なっていることが明らかとなった。
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