2022 Fiscal Year Research-status Report
日本語教育における新たなライティング教育の探求:ジャンルアプローチの理解と実践
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21K13045
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
川光 真二 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (20878293)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本語教育 / ライティング教育研究 / 教員養成・研修 / 教師の成長 / ジャンルアプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語教員養成関連科目履修者を対象に、ジャンルアプローチの理解を目指したワークショップを開発・実施し、得られた知見からジャンルアプローチの実行可能性および教員の自己成長について検討する。
令和4年度は、主に以下の3つに取り組んだ。 ①ワークショップで使用するサンプルテクスト(「昔話」「アカデミックレポート」「介護記録」)の収集および分析を行った。昔話に関しては、体系機能言語学のこれまでの研究によって明らかになっている言語学的特徴を参考にし、それらの特徴がある程度反映されている昔話のテクストを3つ収集した。アカデミックレポートおよび介護記録に関しては、体系機能言語学の領域で文献が見つけられなかったため、本研究者が分析し、ワークショップに適しているものを14個収集した。分析で明らかになったアカデミックレポートの特徴や考察については、英語論文の形にまとめた。 ②ワークショップの開催回数の検討および変更を行った。申請時の計画では、開催回数を全15回としていたが、継続して参加できる参加者があまり見込まれないことを考慮し、全3回へ変更した。それに伴い、ワークショップで取り扱う内容も単純化した。具体的には、ジャンル理論の説明において、ジャンルの本質の理解を促すような問いかけや話し合いを取り入れ、ジャンルを直感的にも捉えられるような工夫を加えた。また、使用する資料は、参加者がメモをとる負担を軽減するため、空欄補充形式にした。 ③研究者が担当している日本語読み書きクラスにおいて、ジャンルアプローチに基づいたライティング指導の実践を行った。この実践は申請時当初には計画していなかったが、実証的な知見がワークショップ開発に付加すると考え、秋学期と春学期に実施した。この実践の報告および振り返りは、2023年8月17日、18日のカナダ日本語教育振興会年次大会のポスター発表として採用されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の計画では、ワークショップ参加者に興味のあるテクストを持ち込んでもらい、それを分析してもらうことを予定していた。しかし、今回のワークショップの単純化の決断に伴い、研究者がサンプルテクストを用意し、そちらを分析してもらうことにしたため、サンプルテクストの収集、分析、および教材化の作業が加わり、予定より遅れがでている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、以下のことに取り組む予定である。 ①引き続き、サンプルテクストの収集、分析、および教材化を行う。先に述べたサンプルテクストの他にも、目的の異なる様々なテクスト(例えば、ビジネスメールや、児童・生徒が使用する国語や算数の教科書など)を準備し、ワークショップの参加者が自分の興味や希望する活動分野に照らして分析するテクストを選べる形式にする予定である。教材完成後はワークショップの実践およびデータ収集を行い、分析、調査のまとめを行う。 ②並行して、アカデミックレポートの特徴および考察をまとめた英語論文や、研究者自身のクラスで行ったジャンルアプローチの実践報告など、ワークショップ開発の過程で行った調査の結果を発表する。各専門分野の研究者からフィードバックをもらい、ワークショップをより良いものにしたい。
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Causes of Carryover |
令和4年度は、インタビューデータをテクスト化する費用や、国内国外の研究発表大会での発表に必要な旅費および宿泊費を計上していたが、サンプルテクストの収集および分析に時間がかかってしまい、データ収集および研究成果をまとめるまでに至っておらず、それらが未使用分として残った。令和5年度はカナダでの発表が確定しており、その旅費および宿泊費を前年度執行残で賄う。
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