2023 Fiscal Year Annual Research Report
皇室への「献上」行為から読み解く近代日本における天皇権威の形成
Project/Area Number |
21K13097
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
池田 さなえ 京都府立大学, 文学部, 准教授 (10781205)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本近代史 / 皇室 / 社会秩序 / 献上 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①補助期間1年目の課題「宮内庁書陵部宮内公文書館所蔵史料を用いて、これまでその全容が解明されてこなかった明治期の天皇・皇室への「献上」行為の広がりを解明(数量的データ解析・公開)する」の成果公表と、②補助期間2年目の課題「各府県に残る史料を用いて、個別具体的な「献上」の事例検討を行い、人びとが「献上」を行う動機を解明(「献上」の質的分析)する」において前年度に実施できなかった作業を行った。 ①について、『日本史研究』に投稿したところ先行研究や史料調査の課題、概念定義の課題、図表デザインの課題を指摘され不採択となった。修正意見を踏まえ、「恩賜録」に加え、侍従職作成の「侍従日録」「日録」、及び六大巡幸時に作成された「幸啓録」につき明治4年~16年の計129冊を追加調査し、更に六大巡幸に関する先行研究を29点追加調査した。その結果、(1)下からの献上の増減は六大巡幸と連動していたこと、(2)後の「献品規程」にて公認された献上は、下からの自発的な献上の追認と、政府の政策的期待の表現という二つの側面があったが、前者がより大きなウエイトを占めており、実際の献上も前者に大きく偏っていたことが明らかになった。これに前年度までの発見を組み合わせ、明治に入り身分制と連動した近世的献上は全面的に否定されたが、身分集団ではなく個人によってなされる献上が徐々に増加し、天皇への臣民個々の「赤心」を重視したい宮内省はそれを積極的に認めていくことで、天皇を頂点とする新たな秩序が形成されていくという時代像を見出した。 補助事業終了はこの成果をもとに再投稿し、掲載を目指していく。②について、前年度に引き続き刊行史料のOCR化を進めるとともに未刊行文書の収集・翻刻を進め、宮内省に上げられる前段階の献上の存在を更に明らかにすることができた。この成果は補助事業終了後に公表することが決定している。
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