2023 Fiscal Year Research-status Report
大破した寺院聖教の保存・活用にむけた調査方法に関する研究
Project/Area Number |
21K13112
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
橘 悠太 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, アソシエイトフェロー (40847662)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 寺院聖教 / 聖教調査 / 一切経 / データベース構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が対象とする大破聖教については、本年度も引き続き當麻寺一切経を中心にすすめた。 當麻寺一切経については、開披作業が済んだ大破聖教より基準史料(分類・整理する上での基準となる年月日などの奥書がある経典)を選定する作業について、前年度から継続して実施した。そのうち、箪笥以外に荒縄で一括されて収納されていた一切経群について、確認・選定作業をおこなった。選定した一切経については、前年度に引き続き写真撮影・整理、データ入力といったデータベース化に向けての基礎作業をおこなった。當麻寺一切経調査の経緯や作業の概要については、「当麻寺所蔵古経典の調査」(『奈良文化財研究所紀要2023』、2023年)として公表した。また、作業の過程で確認することができた特徴的な一切経奥書の一部についても上記の論文内で公表した。これら新出の聖教奥書については、研究代表者が執筆した自治体史に反映した他、新聞等でも取り上げられた。加えて、當麻寺一切経に関係することから実施した當麻寺本堂銘文調査および関連調査の成果について、「当麻寺曼荼羅堂・金堂の中近世銘文」(『木簡研究』45号、2023年)として公表した。 當麻寺一切経以外の大破聖教調査については、新型コロナウイルス流行により中断していた三佛寺所蔵大破聖教調査を再始動させた。今年度の調査では、史料の状態等を改めて確認し、開披可能と判断できたものについて開披の再作業を実施した。作業の結果、従前の調査で確認していたよりも多数の経典が固着したことが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では當麻寺一切経調査について、写真撮影・入力等のデータベース化に向けた作業を実施しているが、史料状態の良くない経典の撮影が続いているため、本年度も撮影作業等に遅れが生じている。また、本年度は新型コロナウイルス流行によって中断していた三佛寺等所蔵大破聖教の調査について久々に実施したが、改めて調査方針の策定からすすめたため、大破聖教の整理作業に十分な調査時間を割くことができなかった。 そのため、本年度の進捗状況についてはやや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
當麻寺一切経については、次年度も箪笥収納以外のものについて作業をおこなう予定である。作業の内容は本年度までと同様、写真撮影・整理およびデータベース化をおこなう予定である。また次年度には、蓄積したデータを元に當麻寺一切経の全体構成を示し、そうした情報が一切経調査などの大規模調査に対してどのように有効であるのかを示すことを本研究の着地点とする。 また、次年度も引き続き三佛寺等の大破聖教調査の実施予定である。それ以外の寺院についても、大破聖教の情報収集および調査について進める予定である。
|
Causes of Carryover |
令和五年度については、前年度まで新型コロナウイルス流行によって中断していた三佛寺所蔵大破聖教調査や大破聖教の確認調査などをすすめたが、中断していたこともあり、調査方針の策定などに時間を要した。そのため、本年度に計上していた出張費用の一部については執行することが叶わず、次年度使用額が生じる結果となった。令和六年度では、本研究の中心に据えている當麻寺一切経調査の他、前年度まで低調であった三佛寺所蔵大破聖教調査や大破聖教関係調査も積極的に実施し、本研究の総括に向けて作業をすすめる予定である。
|