2023 Fiscal Year Research-status Report
中国近世における儒・仏・道三教の死者儀礼と明朝宗教政策との関連について
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21K13123
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
濱野 亮介 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (30780423)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 明代 / 瑜伽宗 / 葬送儀礼 / 仏教儀礼 / 道教儀礼 / 三教 / 瑜伽集要焔口施食儀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,明代の社会で行われた三教の死者儀礼について,それぞれの儀礼書を比較・検討することで,当時の死者儀礼の中での孤魂の扱いやそれに対する儀礼の機能を明らかにし,さらにこれらの社会的な風習がどのように王朝の宗教政策・国家制度と関わっていったかについて考察を進めことを目的とする。 現状注力している作業は,洪武17年に制定されたと明朝による瑜伽宗に対する格式の捜索が主であるが,昨年度から続けている地方志や寺志、民間信仰資料についてはその後めぼしい成果はまだ得られていない。一方で各種大蔵経に収録されている焔口儀礼の儀軌である『瑜伽集要焔口施食儀(以下『施食儀』)』について洪武格式との関係の検討を開始した。『施食儀』は大蔵経に収録されているにもかかわらず著者(訳者)も成立年代も不明で,他の儀軌のように著名な仏僧の名を仮託されてもおらず,どういった経緯で作られたのか全く不明なものである。この儀軌が誰か一人の著作としてでなく王朝が作成したマニュアルとして作られたという仮説をたて,それに基づいて本史料の考察を進めている。 現在までの検討内容を整理すると,『施食儀』は永楽18(1420)年に完成した永楽南蔵から収録されているためそれ以前の成立である,ほかの焔口儀軌にはない真言の梵字が翻訳(音写)されずに収録されておりこれは洪武格式の説明と合致する,先行研究では元代の成立であるという説もあるが明確な決め手はない,ということは判明している。 道教儀礼については,宣徳7(1432)年の『上清霊宝済度大成金書』では,儀礼全体縮小傾向は見られるものの『大明玄教立成斎ショウ儀範』のような招魂・破獄の削除などは見られないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までのコロナ及び中国情勢が原因による方針転換、さらに今年度は遠距離の調査などが行えず予定していた洪武格式に関する史料捜索の進捗状況が思わしくなかったため,遅れが生じた。一方で手元にある史料を再検討する中で『施食儀』に関する仮説を立てることができたため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き『施食儀』に関する仮説の検討を進め,『施食儀』が瑜伽宗の洪武格式と関連があったのか無かったのかを明らかにする。さらに昨年度から行っている地方志など各種史料からの捜索も続け,明代瑜伽宗の洪武格式がどのようなものであったのか明らかし,既におおむね検討を終えている道教儀礼との比較検討を行い,論文化作業を進める。
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Causes of Carryover |
都合により予定していた洪武格式に関する調査が行えなかったため次年度使用額が生じた。未使用額は今後の調査費用、もしくは図書や資料の収集に充てる。
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