2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末~20世紀初頭ドイツ帝国海軍におけるコマンド・テクノロジーの実態の解明
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21K13129
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
前田 充洋 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (90804609)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コマンド・テクノロジー / ドイツ帝国海軍研究 / 工科大学 / 科学技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、次年度に本格的にコマンド・テクノロジーへに関する史料の分析を実施するために、ドイツ帝国海軍をめぐる研究動向を可能な限り包括的に把握することを試みた。帝国海軍をめぐる研究については、①ドイツ帝国海軍の国際的・グローバルな役割とその影響、および②ドイツ帝国内における社会要素との関連、に大別される。 ①については、概して帝国海軍の国外における外交的な役割を論じたもの、ドイツの植民地政策との関連で論じた成果が多い。しかし単に植民地管轄の軍事的な装置としてだけでなく、艦隊およびそれを構成する軍艦を「ドイツ帝国の世界的使命を国内外の聴衆に印象付けるための象徴的な装置」として捉え、被支配側におけるドイツ帝国の印象を扱うものが近年主体となっている観がある。例えば、リュガー(2007)、ザントップ(1997)、フェルスター(1996)などがある。わが国でも、大井(2018;2021)、栗原(2018)の成果がそれに該当するだろう。なお栗原の成果は主にドイツの植民地政策のものであるがその中に艦隊が関わっていたことが触れられている。②については、エッカート・ケーアの成果(1937)以来、重厚な研究史が存在する。ダイスト、ケネディ、ランビ、エプケンハンス、ホブソン、スタインバーグ、ベルクハーン、ベンカーらがそれにあたる。 しかしこれら①、②の動向のなかでも、ドイツ帝国海軍と大学の関係については、詳細に検討されているものが見受けられない。海軍と科学の関係から同時代の海軍主義を紐解こうとしたベンカー(2012)やオブライエンら(2001)の成果や近年刊行されたドイツ帝国史概説(プフリスターら(2021)、アッフラーバッハら(2012)、フレイターク(2018)、リタラック(2010))においても、それは同様である。以上の研究史の悉皆調査の成果について、現在動向論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
校務や所属機関の変更にかかわる手続きなどにより、研究時間の確保がうまくいかず、2021年度内に目標としていた動向論文の執筆・投稿が完了していない。 ただし、2021年度内に凡そ文献収集は完了しており、執筆・投稿を進めるのみである。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、ドイツに渡航の上連邦軍事文書館(Bundesarchiv-Militaerarchiv)での史料調査を予定していたが、COVID-19の猛威が世界規模で収まっておらず、当初の予定を変更して、連邦軍事文書館に連絡を取り、該当史料のコピーを郵送してもらうように手筈を整えていく。連絡を密にとり、閲覧を予定していた史料のコピーを8月中に送付・落手できるよう手配を進めていきたい。 8月中に史料が到着すれば、動向論文の執筆、投稿とあわせて史料の分析を開始する。 このスケジュール通りすすめ、年明けの1月、2月に開催される予定のドイツ現代史研究会例会などでその成果を報告できるようにスケジュールを調整する。
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Causes of Carryover |
2022年2月よりヨーロッパからの空輸状況に困難が生じ、納品が大幅に遅れる可能性がある旨を、納品業者よりいただいた。そのため執行をいったん中断し次年度に中断分とまとめて発注を再度行うこととした。 また2022年度に発行予定の書籍についても購入予定であるため、併せて使用したい。
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