2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K13133
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
梶原 洋一 京都産業大学, 文化学部, 助教 (50844552)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中世ヨーロッパ / 托鉢修道会 / ドミニコ会 / 学位 / 大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年においては、まず托鉢修道会の中でも最も学問活動に積極的であったことで知られるドミニコ会における学位の問題について集中的に取り組んだ。中世ドミニコ会の教育体制を詳細に研究したものとして、以下の投稿論文を発表した。梶原洋一(単著)「中世ドミニコ会における修学のための移動 (小特集 人の移動と学知の形成をめぐる歴史学)」『歴史学研究』1012号,2021年8月 また、ドミニコ会の組織統治のあり方を学位の問題を通じて考察したものとして、以下の分担執筆論文を発表した。梶原洋一(単著):「中世ドミニコ会統治における総会と総長;―大学学位の問題を通じて―」高山博・亀長洋子編『中世ヨーロッパの政治的結合体』東京大学出版会、2022年2月 一方で、本研究課題とも密接に関わる研究内容について以下のような経過報告を発表した。梶原洋一(単著):「研究経過報告『中世の托鉢修道会における大学学位の意義』」『京都産業大学総合学術研究所 所報』16号、2021年、 さらに、ドミニコ会の活動にとっての書物の意義を、もう一つの有力な托鉢修道会であるフランシスコ会との比較を通じて概観した次のシンポジウム報告を実施した。梶原洋一:「托鉢修道会のアイデンティティと書物」文部科学省科学研究費助成事業・学術変革領域研究(B)「中近世における宗教運動とメディア・世界認識・社会統合:歴史研究の総合的アプローチ」公開シンポジウム「東西中世における修道院・寺社の書物文化──制作・教育・世界観の変容」、東京都立大学、2021年12月
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、ドミニコ会における学位の意義について、修道士の修学や修道会の統治制度という視点から、総会記録・管区会議記録・総長書簡記録簿など多様な史料に基づいた研究成果を発表し、国内の研究者と議論を深めることができた。とりわけ、シンポジウム報告「托鉢修道会のアイデンティティと書物」を通じて、ドミニコ会とフランシスコ会という最も有力な二つの托鉢修道会の比較に本格的に取り組む端緒を得たことは、今後の研究の進展にとって極めて重要な契機といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ドミニコ会についての研究は一旦措き、他の修道会についての資料収集と基本的な情報の整理に着手し、修道会間の比較作業の環境を整備することが喫緊の課題となる。比較の対象として、応募時点で想定していた二つ、すなわち托鉢修道会のもう一方の雄であるフランシスコ会、そして観想修道会の一例として挙げていたシトー会に加えて、残る二つの有力な托鉢修道会であるカルメル会、アウグスティヌス隠修士会についても考察に含めれられないかを今後検討していきたい。これらの修道会について、まずは法制・行政史料の類型や所在の把握につとめる。想定される史料類型は、会則、総会決議記録、管区会議記録、総長書簡記録簿などである。これらについて、刊行されたものは速やかに入手の手筈を整え、当該研究テーマに関係する内容がどの程度含まれるかを大まかに把握する作業を進めるとともに、未刊行の文書館史料があれば利用の必要性や可能性について検討を進めることが課題となろう。
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Research Products
(4 results)