2023 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of manufacturing technology for paints using tung oil as a binder that are strong enough to engrave line pattern
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21K13143
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
永井 義隆 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (40880620)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乾性油 / 桐油 / 豚血 / 塗料 / 伝世資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度では主に塗膜の乾燥時間を早める豚血の有効成分の調査、桐油と豚血を用いた2層および3層のモデル試料の作製と分析を行った。塗膜の乾燥時間を早める豚血の有効成分の調査では豚血を遠心分離し上澄み液と固形物に分けて乾燥時間の調査を行った。また、Py-GC/MS を用いて煮桐油、四酸化三鉛、水銀朱、豚血を混練した塗膜や、豚血の上澄み液と固形物の成分調査をした。豚血の上澄み液を加えた塗膜と固形物を加えた塗膜の乾燥時間を比較すると固形物の方が、乾燥時間が早かった。また、Py-GC/MSの結果から、豚血の上澄み液よりも固形物を加えた塗膜からタンパク質の熱分解により生成するジケトピペラジン類や、コレステロール誘導体を多く検出した。したがって、豚血の固形物部分に多く含まれるタンパク質やコレステロール類が塗膜の乾燥時間を早める有効成分であることが示唆された。さらに、豚血の固形物のみよりも遠心分離前の豚血を加えた塗膜のほうが乾燥時間が短いことが確認された。これは、タンパク質やコレステロール類が塗膜の乾燥時間を早める有効成分であることに加え、上澄み液に含まれる化合物が相互作用を起こし乾燥時間が早くなったと考えられる。木板に豚血下地と塗料を塗布した 2 層モデル試料と木版に豚血下地と塗料を2層重ね塗りした3層モデル試料の分析では伝世資料との比較を行った。クロスセクション分析の結果より、モデル試料は伝世資料と比較すると粒子の大きさや下地層の色相や厚さが異なっていた。また、ED-XRFの結果から、モデル試料の豚血下地と伝世資料の下地から検出された元素が異なっていた。分析結果から伝世資料の下地には炭酸カルシウムを主成分とする貝殻や珊瑚末などのカルシウムが豊富な材料が混練された可能性が示された。豚血下地のモデル試料との分析結果の比較によって伝世資料には豚血下地が使用されていない可能性を再確認した。
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