2021 Fiscal Year Research-status Report
梅雨と秋雨の過去120年間の長期変動の実態とメカニズムの解明
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21K13154
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
遠藤 洋和 気象庁気象研究所, 気候・環境研究部, 主任研究官 (40462519)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 梅雨 / 秋雨 / 極端降水 / 長期変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の東日本・西日本の気象官署(44地点)における1901年~2020年の日降水量データを用いて、梅雨期と秋雨期を対象に平均降水および極端降水の長期変動を調べた。20世紀前半(1901年~1950年平均)と21世紀初頭(2001年~2020年平均)における平均降水量を比較すると、後者の期間では、梅雨初期(6月上旬~中旬)は減少する一方で、梅雨中期~末期(6月下旬~7月下旬)は増加しており、降水量極大時期が季節的に遅れる傾向が見られた。梅雨期全体(6月~7月)の降水量は増加していた。秋雨期の降水量については、中期(9月下旬~10月上旬)は顕著に減少する一方、末期(10月中旬~下旬)はやや増加していた。秋雨期の降水量極大は不明瞭化し、秋雨期全体(9月~10月)の降水量は減少していた。これらと同様の傾向は120年間の長期トレンド解析でも見られた。 極端降水の長期トレンドについて、季節最大1日降水量(Rx1d)を対象に調べた。梅雨期のRx1dは多くの地域で増加しており、特に西日本日本海側で顕著な増加が見られた(+22.8%/100年、+17.5%/℃)。秋雨期のRx1dは西日本日本海側を除いて増加しており、東日本太平洋側における増加率が比較的大きかった。 過去120年間の長期トレンドを梅雨期と秋雨期で対比すると、梅雨は活発化する一方で秋雨はやや不活発化の傾向が見られた。両者で傾向が異なる点は興味深い。それぞれの現象を形成する大規模背景場の長期変動の違いが関係している可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画に沿って、国内の過去120年間の降水量観測データを用いて、梅雨期と秋雨期の平均降水および極端降水の長期変動の実態を調べた。その結果、梅雨と秋雨の長期変動における地域性や季節進行の変調についての詳細を明らかにした。また、過去120年間の長期トレンドとして、梅雨は活発化する一方で秋雨はやや不活発化しているという興味深い観測事実を見い出した。以上、おおむね計画通り順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
グリッド化された地上気温や降水量等の長期地上観測データセットおよび長期大気再解析データセット(JRA-55等)を用いて、東アジア域を対象に20世紀長期変動の広域解析を行う。そして、観測された梅雨と秋雨の長期変動に対して、モンスーンや中緯度偏西風等の大規模場の観点から気候学的な説明を加える。また、台風に伴う降水(台風降水)とそれ以外の降水に区別して、台風降水が梅雨・秋雨の長期変動に及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額1,027,190円は、初年度に予定していたデータストレージ購入を見送ったことおよび研究費を効率的に使用して発生した残額である。次年度に請求する金額と併せて、データストレージの購入等、研究計画遂行のために使用する。
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