2021 Fiscal Year Research-status Report
An anthropological study on care work and householding in urban India
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21K13170
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Research Institution | Eikei University of Hiroshima |
Principal Investigator |
田口 陽子 叡啓大学, ソーシャルシステムデザイン学部, 准教授 (00778251)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ケア労働 / 家事労働 / 社会運動 / 道徳的想像力 / ヒエラルキー / 比喩 / 家族 / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、インド都市部における有償家事労働をめぐる複数の道徳的な想像力に焦点をあて、これまでの調査で得たデータを整理し、文献研究を行った。具体的には、家事労働者の待遇や権利向上を目指す社会運動に関して、2018年にインドで実施した予備調査のデータの分析を行った。また、グローバルな有償家事労働運動とインド国内の有償家事労働者の現状に関する文献をレビューした。 グローバルな有償家事労働運動との比較から見えてくるインドの国内状況の特徴として、カーストと階級の絡み合いがある。このことは、「家事労働」のカテゴリーに入りうる職務に、伝統的にさまざまに序列化された仕事が含まれており、「家事労働者」としてのまとまりが想像されにくい現状につながっている。その一方で、グローバルな運動との相互作用の中、インド国内においても「家事労働者」というカテゴリーが生成しつつあることが明らかになった。そこで今後のフィールドワークでは、世帯経営にかかわる幅広い仕事がどのように再編成され、新たな道徳的想像力に結びついていくのかについて調査を行う。加えて、インドの家事労働を事例として、近代的な労働をめぐる枠組みをこえた労働のあり方と関係性について、理論的な研究を進める。 労働者運動に関する研究については、日本南アジア学会で発表を行い、フィードバックを受けたうえで、南アジア地域研究国立民族学博物館拠点より査読付きワーキングペーパーとして出版した。さらに、国立民族学博物館共同研究や東京外国語大学AA研共同研究での報告を通して国内外の研究者と議論を深め、東京外国語大学南アジア研究センターにおいて英文での論考を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染状況を考慮し、インドにおける現地調査は実施しなかった。この状況は研究開始時に想定していたことでもあるので、今年度はこれまで集めたデータと文献調査にもとづいた研究を進め、成果を発表するとともに、今後の課題を明確化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の状況を注視しながら、なるべく年度中にインドにおけるフィールドワークを実施する予定である。その際、1)家事労働をめぐる労働運動や労働者支援状況と、2)家事労働者の仕事と日常生活、に焦点を当てていく。 申請者のこれまでの調査では、雇用主の世帯を拠点とし、そこに出入りするケア労働者の仕事を記録してきた。今後は、労働者側に視点を移し、労働者の基礎データを収集し、一日の仕事や仕事外での人間関係を記録する。また、COVID-19の流行が家事労働者に与えた影響と労働内容や人間関係の変容についても明らかにする。 理論的には、経済人類学的な観点からケア労働の文献研究を進め、日本南アジア学会や日本文化人類学会の学会・研究会で研究発表を行い、議論を深める。
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Causes of Carryover |
フィールドワークが実施できなかったことにより、若干の未使用額が発生した。未使用分は次年度のフィールドワークに使用する予定である。
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Research Products
(7 results)