2022 Fiscal Year Research-status Report
An anthropological study on care work and householding in urban India
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21K13170
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Research Institution | Eikei University of Hiroshima |
Principal Investigator |
田口 陽子 叡啓大学, ソーシャルシステムデザイン学部, 准教授 (00778251)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ケア / 家事 / 労働 / 経済 / 道徳 / 想像力 / ヒエラルキー / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、家事‐ケア労働について経済人類学やフェミニズムにおける先行研究やインドの民族誌を中心に文献研究を行った。また、9月と12月にそれぞれ約3週間、インド、マハーラーシュトラ州都市部において、家事労働者、雇用主、家事労働運動に携わる団体を対象とした聞き取りと参与観察を行った。 インド都市部における家事労働をテーマとした人類学の先行研究では、複数の社会的想像力や関係性が結びつく中で、現場の人びとが生み出している矛盾を含んだ新しい実践を捉えるため、「プラグマティックな親密さ」や「プラグマティックな道徳」という概念が提出されている。本年度は、これらの概念を参考にして、現地調査とデータ分析を行った。 インドでの現地調査からは、都市化や市場化の影響で家事労働実践が変化している一方で、家事がヒエラルキカルな親族・社会関係に埋め込まれたものであることがより明らかになった。ここでいう親族・社会関係には、規範的な関係や、かつてあったものとして想像される関係、現在の生活のために必要な関係などが含まれている。家事が関係を作り出すだけでなく、これら複数の関係を維持したり可能にするために家事が行われ、労働者が雇われているという相互作用が浮かびあがってきた。 研究の途中経過について、日本文化人類学会、SAAG(South Asian Affairs Group)勉強会、ポピュリズムの人類学研究会、国立民族学博物館共同研究会等で口頭発表を行い、関連分野の研究者との学術交流を深めた。文献研究と研究会での議論にもとづき、家事を介して人間/社会関係を捉え直すための論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はインドにおける現地調査を実施し、新たな調査対象者との関係を築き、今後の調査を発展させる足場づくりを行うことができた。また、複数の学会や研究会で議論を深め、今後の課題を明確化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
文献研究を進めるとともに、インドにおけるフィールドワークを実施する予定である。現地調査においては、引き続き家事労働者や雇い主にインタビューを行うとともに、いくつかの主要インフォーマントの家庭における一定期間の参与観察の可能性を探る。 日本文化人類学会や国立民族学博物館共同研究会等で進捗状況を発表するとともに、これまでの成果を論文として出版することで、議論を深める予定である。
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Research Products
(6 results)