2021 Fiscal Year Research-status Report
ナイジェリアの家族・福祉・医療の変容と周縁化された人びとの生に関する人類学的研究
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21K13173
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Research Institution | Toyo Gakuen University |
Principal Investigator |
玉井 隆 東洋学園大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (40845129)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナイジェリア / 精神医療 / 暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はCOVID-19の影響によりナイジェリアに渡航することができなかったため、文献サーベイとメディア情報の収集を行うことで、以下2つのことを実施した。まずナイジェリアの植民地期における精神医療の展開に関する既存の研究を批判的に検討する作業を行った。その結果、精神的な困難を抱える人は、家族やその周辺の人物によりケアされるべきとする、現在の「アフリカ的伝統」は、少なくともナイジェリアの場合、植民地期における植民地経営と制度構築の結果として生み出されたのではとする課題に至った。これについては先行研究の検討が不足していると思われる、(1)植民地期後期から独立後にかけての精神医療にかかわる制度の変遷とその実施、(2)同時期における国立精神神経病院の施設の運営状況等を調査することで検討していく必要がある。これら2つについては、引き続き文献サーベイを行うと同時に、ナイジェリアでの渡航が可能となった際は国立精神神経病院での聞き取りや資料収集を行い検討していく。 次に本研究が重視する概念の一つである<暴力>について具体的に検討しているところ、ナイジェリアにおいて、COVID-19流行やロックダウン下において、様々な<暴力>が顕在化したことが、メディア情報を収集する中で明らかとなった。なかでも国家権力(治安機関)による住民への暴力の件数は増加しまたその内容も凄まじかった。そこでそうした暴力がどのような政治力学のもとで発生し、それに対して人びとはどのように対応しているのかを、インターネット上の情報を収集し検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の交付申請書に基づけば、2021年度はナイジェリアへのフィールド調査を実施する予定であったが、外務省が発出するナイジェリアの感染症危険情報レベルは2021年度を通して全土でレベル3(渡航は止めてください)が継続されており、それが適わなかったため。他方、その分より多くの時間をかけ文献サーベイやメディア情報の収集に取り組み上記の成果を上げることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)外務省が発出る感染症危険情報を確認しながらナイジェリア渡航の可能性を探る。ナイジェリアの調査協力者とは定期的に連絡を取っており、すぐに調査を行う準備はできている。(2)2021年度に検討した<暴力>について更に追及するため、国家権力による人権に明らかに反する暴力の被害にあった人びとに対する聞き取り調査を、ナイジェリアの大学教員と共に実施することを検討している。既存の研究は暴力の告発は行うが、その発生メカニズムや、暴力後の人びとのケアをめぐる議論は十分に行っていない。(3)植民地期から現在までの精神医療の展開に関する文献サーベイを継続して行うことで、現在の精神医療とその実践をめぐる歴史的背景を明らかにしていく。
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