2022 Fiscal Year Research-status Report
米国のメキシコ先住民移民同郷者会における「伝統知」を通じた他者との連帯
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21K13174
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
山越 英嗣 都留文科大学, 文学部, 准教授 (00843822)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メキシコ移民 / 同郷会 / ゲラゲッツァ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症の影響で現地調査の実施は未実施であったが、オアハカ人同郷者会OROの代表を務めるマウロ・エルナンデス氏や、ダンスグループ、ウアシャカクの代表、グラシエラ・ロペスとのオンラインによるインタビューを行うことができた(2022年9月、10月に実施)。かれらによれば、OROのゲラゲッツァ祭は2022年から再び対面での開催となった。しかし、コロナウィルスやカリフォルニアの物価高騰はかれらの生活にも大きな変化をもたらし、とくに近年オアハカ移民は、移住先としてカリフォルニアを避けるようになったことが分かった。このような点からも、OROはオアハカ出身者だけの連帯を目指すのではなく、他のマイノリティたちとの連携に力を入れていることが明らかとなった。また、マウロ氏のインタビューから、オアハカのサポテコ村落で伝統的に用いられてきたゲラゲッツァ(相互扶助)の精神は、かれらがロサンゼルスで生きていくうえでも依然として重要な意味をもっていることが明らかになった。たとえばそれは、近年ではコロナウィルス感染症で亡くなった仲間の遺体を故郷に送り返すための資金を集めるといったさいに発揮されたという。こうしたゲラゲッツァの精神は、たとえ顔が見えない相手であっても発揮される。さらに、エルナンデス氏やロペス氏によれば、ロサンゼルスにおいて他のマイノリティたちと連携を取ることも、このゲラゲッツァの精神に基づくという。これはオアハカにおいて伝統的に実践されてきたゲラゲッツァが、村落コミュニティ内部で完結する性質をもっていたことを考えると、そうしたものからは外れる考え方である。すなわち、オアハカ移民たちは、ロサンゼルスでゲラゲッツァの精神を自分たちの生活に適合するように変化させながら、彼らが直面する困難に立ち向かおうとしていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査を通じた情報収集はできなかったが、近年、刊行されたメキシコ人同郷会についての文献整理や、オンラインでのインタビューを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ロサンゼルスの同郷会OROによるゲラゲッツァ祭の現地調査を実施し、参加者たちのエスニシティや、ゲラゲッツァの理念が日常生活においてどのように実践されているかを明らかにする。また、FIOBなど、ORO以外の同郷会の調査を実施する。
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Causes of Carryover |
調査地でのコロナウィルス感染症の感染状況が改善しておらず、また申請者が基礎疾患をもっているため、現地調査の実施を控えた。2022年度はオンラインでの調査に切り替えた。余剰分は次年度以降の現地調査費用に充てる。
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Research Products
(1 results)