2022 Fiscal Year Research-status Report
ヘイトスピーチ規制の「承認論」による再構成の可能性とその限界
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21K13180
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
菅沼 博子 名古屋商科大学, 経済学部, 講師 (80866509)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヘイトスピーチ / 刑法哲学 / 憲法学 / 表現の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル化に伴い、多文化化・多元化が進展しつつあるわが国においても、ヘイトスピーチ規制の検討は社会的・政治的に喫緊の課題である。そのような状況について憲法学の内外において認識が高まりつつも、これまでの憲法学におけるヘイトスピーチ研究は、アメリカ憲法学研究においては法哲学的・政治哲学的アプローチやヘイトスピーチ規制が存在しないアメリカの判例法理の検討にとどまり、ドイツ憲法学研究においては、ヘイトスピーチ規制の存在を前提として、連邦憲法裁判所の判例法理の検討にとどまりがちであった。そこで、本研究は、ヘイトスピーチの法規制が存在するドイツを検討対象国として、憲法哲学・刑法哲学的な分析手法が、どのように現実の規制に対して分析・批判を加えているかを明らかにする。それによって、法哲学的なアプローチと法政策的な議論とが断絶しがちであったわが国のヘイトスピーチの議論において、その断絶を解消することを目指すものである。 本研究では、ヘーゲルの法思想、とりわけ「承認論」に着目し、ドイツ刑法学がどのように「承認論」のコンセプトを受け止め、展開してきたかという点を検討する。そのうえで、承認論を具体的にヘイトスピーチ・名誉保護の文脈にそって検討したものとして、刑法哲学者Pawlikの議論の検討を行う。 今年度は、ヘイトスピーチの刑事規制の保護義務による構成にあたって参照されるPawlikの刑法学説と、Pawlikのヘイトスピーチ刑事規制論に対する刑法哲学的立場からの批判者であるHoernleの議論の比較検討を行った。今年度の検討課題の考察内容については、次年度において山梨大学教育学部紀要34号(2024年2月刊行予定)への投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属研究機関の異動を行ったため、論文の執筆時期と投稿締切の時期との調整をうまくはかれず、研究成果の公表に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、2021年度・2022年度の研究成果を異動後の所属研究機関において公表するとともに、ドイツの刑事裁判・行政裁判における裁判例の展開の考察結果の公表を予定している。
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Causes of Carryover |
今年度末に所属研究機関の異動を行った関係で、検討していた研究図書の購入についてその一部を次年度に行うこととしたため。
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