2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13183
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 智成 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (00779598)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 公務員の個人責任 / 国家賠償法 / 不法行為法 / 住民訴訟 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公務員個人が法的に金銭的責任を負わされるのはいかなる場合であり、また、それはいかなる考慮に基づくものなのか、という根本的な疑問を端緒として、国家賠償法第1条第2項に基づく求償訴訟や地方自治法第242条の2第1項第4号に基づく住民訴訟等において公務員個人に負わされうる種々の金銭的責任について、それぞれの解釈論上あるいは制度上の共通点や差異等を明確化することにより、その相互関係を明らかにした上で、各責任間の調和を図ることを可能ならしめる法的規律のあり方を解明しようとするものである。 2年目の本年度は、フランス法における公務員個人の金銭的責任に関する判例及び学説を網羅的に渉猟し、特に、わが国で提起されている訴訟と一定の共通性が見られる、当該責任の成否が問題となった訴訟を中心に、当該責任の法的規律のあり方を明らかにすることを試みた。具体的には、例えば、小学校の教員が児童らに殴打等の体罰を行った事件に係る訴訟(C.E. 12 decembre 2008, n°296982, Rec. 454)や、市長がある不動産計画が住民の生活環境を害するおそれがあることなどを理由に建築許可の拒否等のさまざまな行政手段を用いて当該計画の実現を長年にわたって強固に妨害し続けた事件に係る訴訟(Civ. 1re 25 janvier 2017, n°15-10.852, D.A. 2017, alertes n°45.)を検討し、上記責任の成否の判断基準や、そこで考慮されている事項等を分析・整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記【研究実績の概要】において示したように、本年度は、おおむね当初の計画どおり、フランス法における公務員個人の金銭的責任に関する判例及び学説に関する研究を進めることができた。また、当初計画にはなかったものの、出版社からの依頼等により、本研究課題の主題である公務員個人の金銭的責任についての論文をはじめ、同課題に関連する国家補償法についての複数の論文を執筆・公表する機会を得ることができた。したがって、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の計画どおり、本年度行ったフランス法に関する研究を、安直な模倣にならないよう日仏両国の法制度の差異に配慮しつつ、日本法に架橋する作業を行い、個別の事案に基づいた分析が可能となるよう議論の整理を行うことを試みる。また、これまでの研究成果を部分的に論文としてまとめ、公表作業を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により出張が困難な状況が残存し、また、国内の学会や研究会もオンライン開催のものが多かったため、当初予定していた出張のための旅費が余ったことにより、次年度使用額が生じることとなった。当該残額については、次年度の旅費や日仏国家賠償法関連の文献の購入費に充てる予定である。
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