2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13184
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
本庄 未佳 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60868743)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本国憲法 / 憲法前文 / 平和主義 / 自衛戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、ハッシーが残したGHQの憲法制定作業の一次資料、ハッシーの手書きのメモランダム、ハッシー自身が日本国憲法の制定に携わったことを記した自伝(未刊)、日本研究を行っていた研究者との私的書簡を分析した。この分析を通じて、ハッシーが明治時代及び昭和戦前の日本の政治哲学について研究し、日本国憲法制定後の日本の政治哲学を比較研究していたことが明らかになった。このことは、ハッシーらGHQメンバーが天皇による統治の重要性を研究したうえで、天皇を戦犯から如何に除外をするために活動してきたかを示している点で意義がある。 また、米国大統領(当時)ルーズヴェルトと親交があった英国の作家H.G.ウェルズやサンキー大法官についても、H.G.ウェルズの書籍及び英国の新聞等で分析を行った。この分析によって、「四つの自由」の淵源となったであろう英国の作家H.G.ウェルズやサンキー大法官によって作られた「人権宣言」(the natural Right of Man)の存在が明らかとなった。このことは、前文の思想淵源が、米国によるものではなく、第二次世界大戦を終結させることが人権保障の観点から如何に重要かを説いた裁判官らの思想であることが示されていることに意義がある。 更に、9条の淵源といわれている国際条約(戦争放棄条約)を締結する際の議事録を分析した。この議事録によれば、放棄する「戦争」のなかに、自衛戦争が含まれるのか否かという質疑が日本の外交官を主体として展開されていたことが明らかとなった。このことは、憲法9条を作る際に、幣原喜重郎首相(当時)が当時外務省大臣であったことを考慮すれば、自衛戦争について国際的議論を十分に理解したうえで、9条制定を試みていたことが示されている点に意義を見出すことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度は、ハッシーが残したGHQの憲法制定作業の一次資料、ハッシーの手書きのメモランダム、ハッシー自身が日本国憲法の制定に携わったことを記した自伝(未刊)、日本研究を行っていた研究者との私的書簡を分析した。この分析を通じて、ハッシーが明治時代及び昭和戦前の日本の政治哲学について研究し、日本国憲法制定後の日本の政治哲学を比較研究していたことが明らかになった。このことは、ハッシーらGHQメンバーが天皇による統治の重要性を研究したうえで、天皇を戦犯から如何に除外をするために活動してきたかを示している点で意義がある。 また、米国大統領(当時)ルーズヴェルトと親交があった英国の作家H.G.ウェルズやサンキー大法官についても、H.G.ウェルズの書籍及び英国の新聞等で分析を行った。この分析によって、「四つの自由」の淵源となったであろう英国の作家H.G.ウェルズやサンキー大法官によって作られた「人権宣言」(the natural Right of Man)の存在が明らかとなった。このことは、前文の思想淵源が、米国によるものではなく、第二次世界大戦を終結させることが人権保障の観点から如何に重要かを説いた裁判官らの思想であることが示されていることに意義がある。 更に、9条の淵源といわれている国際条約(戦争放棄条約)を締結する際の議事録を分析した。この議事録によれば、放棄する「戦争」のなかに、自衛戦争が含まれるのか否かという質疑が日本の外交官を主体として展開されていたことが明らかとなった。このことは、憲法9条を作る際に、幣原喜重郎首相(当時)が当時外務省大臣であったことを考慮すれば、自衛戦争について国際的議論を十分に理解したうえで、9条制定を試みていたことが示されている点に意義を見出すことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しなかったこともあり、外国での資料収集・資料精読が困難な状況にあった。特に、ハッシー自身が寄贈を行ったメリーランド大学図書館での資料収集、スタンフォード大学フーバー研究所での資料収集が未完了である。また、デール・へレガースの米軍占領及び日本国憲法制定に関する関係者へのインタビューや通信文、手書きのメモ等の一次資料も入手することができていない。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しなかったこともあり、外国での資料収集・資料精読が困難な状況にあったため次年度使用額が生じてしまった。使用計画としては、初年度に予定していたハッシー自身が寄贈を行ったメリーランド大学図書館での資料収集、スタンフォード大学フーバー研究所での資料収集、デール・へレガースの米軍占領及び日本国憲法制定に関する関係者へのインタビューや通信文、手書きのメモ等の一次資料を収取する旅費、コピー費に充てる予定である。
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