2021 Fiscal Year Research-status Report
判決類型論および「手続的入念さの要請」が立法裁量統制にいかなる役割を果たし得るか
Project/Area Number |
21K13187
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 真敬 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70734747)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 判決類型 / 立法者の努力 / 違憲の主観化 / 監視義務 / 事後是正義務 / 手続的な入念さ |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目である2021年度は、ドイツ連邦憲法裁判所の判決類型論について検討を行うこととしていた。 嘗て、博士学位請求論文で判決類型論について若干の検討を行っていたものの、不充分な点が多く残っていた。そこで、2021年度は、ドイツ判決類型論についてその後の検討も踏まえて博士学位請求論文を加筆修正し、それを何らかの形で公刊することとした。作業の結果、拙著『立法裁量と過程の統制』(尚学社、2022年3月)の第7章で、博士学位請求論文に大幅な加筆修正を行い、ドイツ判決類型論の検討の現時点での成果を示すことができた。近年、ドイツ判決類型論についての検討はほとんど公刊されていないので、学術的にも一定の意義があると考える。また、「1票の較差」訴訟では、引き続き判決類型論(違憲状態か・違憲有効か・違憲無効か)といった論点が問題となっているが、上記拙著では、選挙権の具体的内実との関係で、いかなる立法裁量統制の審査が必要か、いかなる判決類型論が可能かという点も検討を行い、今後の議論に向けた一定の足場を設定できたと考える。ただし、判決類型論の検討に際して、やはりドイツ連邦憲法裁判所の判決類型論の展開を改めてフォローする必要性を感じたが、この点は2021年度は行うことができなかったので、次年度に行いたい。 次に、「手続的な入念さの要請」についても、博士学位請求論文で若干の検討を行っていたが、2021年度は、直接的にこの点についての検討は行わなかった(2年目以降の計画のため)。もっとも、判決類型論にせよ「手続的な入念さの要請」についても、それぞれの憲法上の権利の領域に応じて議論の内実が変化することから、機会があるごとに、各憲法上の権利領域に関する具体的内実を分析するように努め、一定の成果を公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の2021年度は、これまでの検討を踏まえて、判決類型論について一定の成果を示すという計画であった。博士学位論文という素地は存在したものの、上記の拙著『立法裁量と過程の統制』(第7章)においては、その後の検討も踏まえて、博士学位論文に相当程度の加筆修正を行い、本研究の成果を反映することができた。もっとも、本年度の検討で、ドイツ連邦憲法裁判所の判決類型論の展開をより体系的に整理・検討し、より内在的な検討が必要であると感じたが、この点について2021年度は充分な成果を残すことができなかったため、次年度も引き続き判決類型論の更なる検討を行う必要性がある。他方で、「手続的な入念さの要請」も、同じく上記拙著(第6章)にて一定の分析を行ったが、こちらはさほど大幅な加筆修正をすることはできなかった。現段階では、問題の所在を把握することができた段階ではあるが、2022年度に本格的に検討を開始するための足掛かりは作ることができたと考える。また、判決類型や「手続的な入念さの要請」が個別の権利領域にどのように関係するかを明らかにするための準備作業として、機会があるごとに、具体的な憲法上の各権利領域に関する分析も一定程度行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の2年目である2022年度は、ドイツの判決類型論の引き続きの検討の他に、「手続的な入念さの要請」の検討も開始することとなっている。ドイツの判決類型論については、上記の通り、拙著『立法裁量と過程の統制』でも一定の整理を行ったが、ドイツ連邦憲法裁判所の判例理論の展開をあらためて整理・検討することが必要であると感ずるに至ったので、2年目も、この作業を継続することとしたい。なお、可能であればドイツに赴いて調査をする予定であったが、2年目も、新型コロナウイルス感染症のまん延状況が改善しない場合には、残念ではあるが、国内にとどまって研究を行うことになる。「手続的な入念さの要請」についても、判決類型論と並行して検討を開始するが、こちらは憲法上の権利の実体的内容との関連性がより強いものであるから、「手続的な入念さの要請」それ自体の検討に加えて、具体的に何らかの権利領域を取り上げて、そのありようを検討したい。
|
Causes of Carryover |
2021年度も、新型コロナウイルス感染症のまん延により、資料収集のための出張および研究報告のための出張ができなかったため。2022年度も、現在のところ同様の事態が想定されるが、徐々に出張が可能になるのであれば、可能な限り資料収集や研究報告のための出張を再開したい。
|
Research Products
(5 results)