2023 Fiscal Year Research-status Report
機能不全の解消に向けた行政罰各論の領域横断的研究 ―主要6分野の比較分析―
Project/Area Number |
21K13188
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 良弘 立命館大学, 法学部, 教授 (10766744)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 行政罰 / 行政刑法 / 行政上の秩序罰 / 実効性確保 / 環境刑法 / 租税刑法 / 知的財産刑法 / 食品安全法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国の行政罰の重要な課題である機能不全の解消に向けて、行政罰の主要各論分野である環境刑法・経済刑法・租税刑法・知的財産刑法・道路交通刑法・医事刑法を取り上げ、現行の法制度について分析を行った上で、ドイツにおける議論を参考に、各分野の特性を踏まえつつ、行政刑罰と行政上の秩序罰の役割分担及び科罰手続を中心に、行政罰に関する法理論と法制度について検討を加え、さらに、わが国において比較的機能している行政罰規定と機能していない行政罰規定とでは何が異なっているのかを検証した上で、行政罰の基礎をなす法理論と機能不全解消のための法制度のあり方について考察することを目的とする。 研究の第3年次(2023年度)は、第1年次・第2年次に実施した基礎的研究の結果を踏まえ、上記6分野における理論的・実務的課題について横断的分析を行い、これまでの研究成果のうち環境刑法に関するものを取りまとめて論文として公表するとともに、行政罰の機能不全の解消に向けた試みとして、国土交通省が策定した「不法・危険盛土等への対処方策ガイドライン」の刑事告発に関する部分についての分析の結果を取りまとめ、論文として公表した。さらに、行政上の秩序罰(過料)の賦課要件に関する裁判例の分析を行い、判例評釈として公表した。 第4年次(2024年度)は、2023年度に実施する予定であった特許法を含む知的財産法の刑罰規定についてのこれまでの研究成果の取りまとめを中心に研究を実施する予定であるが、本件研究の研究期間の前半において、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響でドイツ法研究の実施が遅れたことから、研究の進捗を踏まえ、研究期間を1年間延長することを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においても、研究計画で予定していた内容の研究を概ね遂行するとともに、当初の研究計画では予定していなかった新たな検討課題(行政犯の刑事告発に関する実務についての分析)についても研究を実施し、その成果を取りまとめて公表した。 他方、ドイツ法研究については文献調査を実施するにとどまり、現地調査については、研究初年度である2021年度から本年度初頭までの新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響により、実施することができないままとなっている。 次年度においても所属校における業務との関係でドイツにおける現地調査は困難であると予想されることから、日本法における研究成果部分を取りまとめを中心に研究を実施し、研究計画調書において予定していた本研究の目的を達成する予定であるが、研究の進捗を踏まえ、研究期間を1年間延長することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
第1~3年次と同様、行政罰各論に関するに日本法及びドイツ法の研究を実施する。 具体的には、第3年次に研究成果を取りまとめて公表した環境刑法を除く主要5分野について、研究を実施するとともに、知的財産刑法については、これまでの研究成果と取りまとめ、学術書を刊行することを目標とする。 ただし、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響によりドイツ法に関する研究が遅れていることから、取りまとめの対象を日本法を中心としたものに変更するとともに、研究の進捗を踏まえ、研究期間を1年間延長することを検討する。
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Causes of Carryover |
本研究は、行政罰の機能不全の解消に向けて、行政罰各論の主要6分野について、文献調査のほか、国や地方公共団体に対してヒアリング等を行うとともに、ドイツ行政罰の執行状況等について現地調査を実施することで、わが国の行政罰の機能不全の要因分析や課題の抽出を行った上で、その解決に向けた検討を行うものであるところ、研究初年度である2021年度から本年度(2023年度)初頭までの新型コロナウイルス感染症の流行の影響により法執行の現場担当者等へのヒアリングやドイツにおける現地調査を実施することが困難であったことから、これらの調査に支出する予定であった旅費等の費用等を使用することができず、また、ヒアリング結果を踏まえた文献調査のための物品費(書籍費)についても残額が生じた。 これらについては次年度以降に順次調査を実施する予定であるが、次年度における研究の進捗を踏まえ研究期間を1年間延長することを検討しており、その場合には、延長した研究期間において繰越額を使用する予定である。
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