2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of Rights and Obligations Relations between a State and a Person in the Context of the Extraterritorial Application of Human Rights Treaties
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21K13193
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
杉木 志帆 香川大学, 教育学部, 講師 (00713033)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 人権条約 / 欧州人権条約 / 域外適用 / 領域外適用 / 国際刑事司法共助 |
Outline of Annual Research Achievements |
人権条約は通常、その締約国領域内で適用される。他方で、グローバリゼーションが深化するなか、人権条約は今日、その締約国領域外でも適用可能であるとの理解が確立している。本研究では、人権条約締約国とその自国領域外にいる外国人との間に権力・支配関係がない場合、それにもかかわらず人権条約を適用しようとする近年の人権裁判所の判断や学説について分析を行うとともに、理論的な基礎づけを行う。それにより、人権条約の域外適用において、国と人との間の権利義務関係を再構築しようと試みる。 令和3年度は、人権条約を締約国領域外で適用すべきとする人権裁判所の判例や学説について広く分析を行った。その結果、人権条約の域外適用については、国と人との間の権力・支配関係に基づく国際人権保障システムを基本としつつも、それでは負わすことのできない人権条約上の責任を、国の行為と人に生じた害との間の事実上の因果関係を根拠に加害国側に負わせることで、個人の救済を拡大しようとする動きがあることが明らかになった(国際法学会2021年度研究大会報告(2021年9月7日)にて研究成果の一部を報告)。この動きは、事実上の因果関係に基づく人権保障システムが構築されつつある証拠とみることができる。 また、欧州人権裁判所は原則として国と人との間の権力・支配関係に基づく人権条約の域外適用を認める立場といえるが、国際刑事司法共助の文脈では黙示的に、事実上の因果関係に基づく域外適用を肯定していると評価できることがわかった(人権判例報第3号にて研究成果の一部を報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初から8月までは休業のため研究を中断していたが、9月以降は研究を再開し、研究成果の一部を公表する機会を得ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、人権裁判所や人権条約機関の動向を調査・分析する。また、その動向がどのような理論的根拠を有するといえ、事実上の因果関係に基づく人権保障システムへと発展していくのかについて、分析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度当初から8月まで休業したため、当初の研究計画を見直したことによる。当初の計画では令和3年度に行う予定であった研究は、令和3年度から4年度の2年間において実施する計画となっている。
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Research Products
(6 results)