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2022 Fiscal Year Research-status Report

Reconstruction of Rights and Obligations Relations between a State and a Person in the Context of the Extraterritorial Application of Human Rights Treaties

Research Project

Project/Area Number 21K13193
Research InstitutionKagawa University

Principal Investigator

杉木 志帆  香川大学, 教育学部, 講師 (00713033)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2026-03-31
Keywords人権条約 / 域外適用 / 領域外適用 / インターネット / 大量傍受
Outline of Annual Research Achievements

今日、国家安全保障上の利益などを理由に、国の情報機関が国内外のインターネット通信を大量傍受する国家実行が蓄積しつつある。こうした大量傍受は、国内外の不特定多数の者について、私生活の尊重への権利に対する干渉や、表現の自由に対する委縮効果を生じさせうる。
令和4年度は、インターネット技術の発展が、人権条約の域外適用に与える影響について検討した。欧州人権裁判所は、自らの通信を傍受された可能性のある者が、条約上の被害者の地位を持つことを認め、大量傍受実施国の国外にいるNGOなどについて条約上の権利侵害を認めている。ここから、当該裁判所は、慎重に明言を避けつつも、大量傍受の実施国が不特定多数の世界中のインターネット通信利用者に対して、欧州人権条約上の権利を保障する義務を負うと黙示的に認めているということができる(国際人権33号にて研究成果の一部を報告)。
大量傍受は、不特定多数の者に、通信データが閲覧されるのではないかという不安感による委縮効果を生じうる。だが、自らの通信データが収集される可能性があるだけでは、その者は大量傍受の実施国の支配下にあるとはいい難い。それにもかかわらず、国内外の不特定多数のインターネット通信の利用者に対して、大量傍受実施国が欧州人権条約上の権利を保障する義務を負うのであれば、それは人権条約の域外適用が事実上の因果関係に基づく人権保障システムによっても許容されうることを示している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

令和3年度に続き令和4年度も、関連する判例の分析を進め、人権条約の域外適用が事実上の因果関係に基づく人権保障システムによっても許容される場合があることを実証的に証明できている。令和3年度に休業期間があり、採択時に予定されていた研究期間の延長と計画変更を同年におこなった。現在の研究計画では、採択時に令和3年度の1年間でおこなう予定であった研究を、同年と令和4年度の2年間でおこなう計画となっている。今年度の研究の進捗は緩やかであったが、現在の研究計画に照らして、おおむね順調に進展しているといえる。研究成果のさらなる公表に向けて、引き続き取り組みを行いたい。

Strategy for Future Research Activity

令和5年度以降は、人権条約の域外適用が事実上の因果関係に基づく人権保障システムによっても許容されうる理由を、理論上どのように説明できるかを検討する。そのために、本研究では今後、国が人権保障義務を負う理論的根拠について論じる国内外の学説を整理し、分析をおこなう。人権条約の域外適用に直接かかわる文献だけでなく、一般国際法における国家の義務を論ずる文献にも射程を広げて整理・分析をおこなうため、複数年度にわたり分析を継続する予定である。研究の最終年度には、事実上の因果関係に基づく人権保障システムでは、人権条約当事国と人との間の権利義務関係が何らかの立憲主義的な関係として捉えられていると提示することを目指したい。

Causes of Carryover

令和3年度に休業期間があるため、採択時に予定されていた研究期間の延長と計画変更を同年におこなった。現在の研究計画では、令和3年度の未使用額の繰り越しを見越して、令和4年度の研究経費をかなり減額している。ただ、現在の所属機関への入職に伴い、別途、所属機関から研究費の支給があり、令和3年度および令和4年度の未使用額の繰り越しが想定以上に多くなった。加えて、令和4年度は、新型コロナウィルスへの対応に不安があったことから、在外研究を積極的におこなうことができなかった。
今日、新型コロナウィルスへの対応が簡便なものとなっていることから、令和5年度以降に在外研究の実施を積極的におこない、研究費の効果的活用に努める。

  • Research Products

    (1 results)

All 2022

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 情報機関による大量傍受に伴う私生活の尊重への権利および表現の自由への干渉(ヨーロッパ人権裁判所2021年5月25日判決)2022

    • Author(s)
      杉木志帆
    • Journal Title

      国際人権

      Volume: 33号 Pages: 107-110頁

URL: 

Published: 2023-12-25  

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