2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13215
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高岡 大輔 九州大学, 法学研究院, 准教授 (60850857)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 信用毀損 / 名誉毀損 / 無形損害 / 逸失利益 / 信用危殆化 |
Outline of Annual Research Achievements |
名誉毀損型の信用毀損について、名誉毀損と異なる規律を必要とするという見解が民法学説上主張されてきた。これについては一定の支持が得られているが、その規律の内容及び適用対象は明らかではない。信用と名誉とはともに社会的評価を内容とする法益であるが、この社会的評価の対象という観点から信用と名誉とを区別するという方法では、信用毀損と名誉毀損を区分することは困難である。 本研究では、ドイツ法における信用危殆化による責任と名誉毀損による責任を分析することを通じて、ドイツにおいてこの二つの責任は当初いくつかの差異が設定されていたが、次第にそれが帰一したこと、その原因の一つに、信用毀損とみうる事例を名誉毀損の規律によって訴えようとする現象があるとみられること、結局、信用と名誉とを区分することは困難であり、むしろ賠償を求める損害が財産的損害であるか、精神的損害であるかという観点から異なる要件が課されているとみうることを明らかにした。 これを踏まえて、日本法上の裁判例を分析することで、従来の指摘とは異なり財産的損害の賠償が請求されることはかなり多く、しかもそれが具体的に認定される場合の他、いわゆる無形損害の算定や慰謝料の算定において実質的に考慮される場合を含めれば、実質的に考慮されている場合が多いことを明らかにした。その上で、名誉毀損の規律は営業上の損害(とりわけ逸失利益)の賠償を扱うに適さないものであり、賠償を求める損害に着目して、信用毀損固有の規律を適用すべきことだと考えている。この成果については論文を執筆しているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた類型のうち最大の類型である名誉毀損型の信用毀損について、ドイツ法の分析及び日本法上の裁判例の検討を行い、一定の成果を得ることができた。その内容については論文として執筆し、掲載の具体的な予定が立っている。 信用の侵害には、名誉毀損型以外にもいくつかの類型が残されているが、これらについても、名誉毀損型で行った検討を基礎とした方法を応用することで研究を進めることが可能だと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、信用毀損を類型化して分析することであった。これまでに、名誉毀損型について分析を行い、一定の成果に達した。 今後は、他の類型についても検討を進める予定である。ただし、不競法上のその他の信用毀損については、名誉毀損型とともに検討することができた。他に、不当執行型については、逸失利益に着目した裁判例の分析がいまある程度まで進んでいるが、これをさらに進める予定がある。汚染型については、最新の裁判例をも踏まえる必要があるが、同じように研究するつもりである。これらの点については日本法の裁判例が多数に上るため、その検討を進めていく。
|
Causes of Carryover |
出張旅費の使用を予定していたが、コロナウイルスの影響で海外渡航ができなくなり、研究会がオンライン開催になるなど、旅費の使用が予定よりも減少したため。 今後、状況が改善されれば、旅費等として使用したい。
|