2021 Fiscal Year Research-status Report
A Research on the Means of Pursuing the Liability of the Members of the Management Board under the German Stock Corporation Act
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21K13216
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
内藤 裕貴 東北学院大学, 法学部, 准教授 (10808322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 株主代表訴訟 / 取締役の責任追及 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021(令和3)年度では、本研究の下準備として、ドイツ株式会社法における取締役の責任追及手段の歴史的展開について調査・研究を行った。これによって、次のことが明らかになった。すなわち、ドイツでは、1884年のドイツ普通商法典により、20%の少数派株主(1965年株式法の制定に至るまでに5%まで引き下げ)から請求があった場合には、会社が発起人や取締役員を含む役員に対して債権を行使する義務を負うとされていた。しかし、1965年の株式法では、定足数を10%に引き上げるとともに、そして少数株主の費用償還義務を拡大するなど、少数株主の権利がさらに制限されることとなり、1965年株式法による取締役の責任追及手段は、少数株主の持株要件および費用償還義務の観点から、実務上大きな意味を持たなかった。これらの弱点は、1998年のKonTraGによる株式法改正によって、特別代理人の選任という形で賠償請求権を強制的に行使する少数株主権が導入され(旧第147条3項)、是正されることとなった。しかし、特別代理人による損害賠償責任の追及は限定的であり、また、費用償還の観点から、同改正による取締役の責任追及も限定的であった。そして、2005年のUMAGによる株式法改正により、訴訟許可手続きを経て提起する方法による株主代表訴訟が制度化され、現在に至っている。しかし、同制度の新設後も、受任する弁護士の採算性の観点から、訴訟許可手続はほとんど利用されず、特に懸念されていた濫用的な株主代表訴訟も現実のものとなっていない。こうした利用実態を踏まえて、ドイツでは、株主代表訴訟の利用を促進するために、同制度の改正の主張がなされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度において調査・研究の結果、ドイツにおける取締役の責任追及手段の歴史的展開について概ね明らかにすることができたと思われる。ただし、今日に至るまでの各改正に際しての立法時の議論等についてまで追うことができておらず、またこれらを反映した内容を論文としてまとめ、所属機関の紀要等においてこれを公表するに至っていない。そのため、現在までの進捗状況を「やや遅れている。」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、2021年度において調査したドイツにおける取締役の責任追及手段の歴史的展開について論文としてまとめ、公表する。次に、ドイツにおける株主代表訴訟制度の位置付けについて明らかにすることを検討する。ドイツでは、2005年の株式法改正による株主代表訴訟制度の導入と同時に、株主による取締役員の責任追及請求権が廃止されることになった。そして、なぜこの責任追及請求権が――株主代表訴訟と併存するのではなく――廃止されるに至ったのかを明らかにするとともに、これに代えて株主代表訴訟制度が導入されるに至った立法過程についても、当時の立法資料や会社法学界での議論状況を手がかりとして明らかにする。
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Causes of Carryover |
2021(令和3)年度においては、新型コロナウイルス感染症の流行により、とくに緊急事態宣言が発出されていた地域(東京)への資料収集が制限されたことに加え、研究成果を報告する機会である研究会が全て会議システムを利用したオンラインによる開催となってしまったため、申請時に計上した旅費の使用が想定を下回ったことが原因であると考えられる。また、「その他」の箇所については申請時において他大学図書館への文献の複写を依頼する予定でその費用を計上をしたが、これについては、ドイツ法のデータベースを契約することによって他大学図書館へ文献の複写依頼をかけなくても、研究資料を入手できたことが大きいと考えられる。 2022(令和4)年度については、新型コロナウイルスの感染症の流行ならびにその対策次第では、2021年度に断念せざるを得なかった資料収集出張を実施することによって、費目別の収支状況と当初の計画との齟齬を限りなく少なくしていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)