2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K13217
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
林 孝宗 中央学院大学, 商学部, 講師 (40731451)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 会社の社会的責任 / 取締役の法的責任 / CSR情報 / 情報開示規制 / 会社の政治献金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画通り、本研究の基礎となるアメリカ・イギリス法に関する学術論文等の分析を通じ、CSR情報の開示と取締役の義務との関係についての議論状況・理論的背景の整理に努めた。先ず、アメリカ法についてであるが、コロナ禍のため、2021年夏に予定していたアメリカでの現地調査は延期となったが、関連文献の収集・検討、Zoomなどを通じた現地シンクタンクの研究員などのインタビューによって研究を進めることができた。特に、アメリカでは大規模公開会社における政治献金の情報開示について、株主総会の勧告的決議(法定の決議事項ではないものの、株主意思を確認するために行う決議)を行うことによって、取締役の義務に関わる誠実性を推定し一定の規律付けをするという議論があることを確認できた。この成果の一部は、法と経営研究(2022年2月)「アメリカにおける会社の政治献金と取締役の法的責任」において公表できている。また、学説上、取締役会の多様性との確保について、取締役の義務が問題になるとの指摘があることも確認できた。 次に、イギリス法であるが、労働者の保護との関係からCSR情報の開示について、会社法関係法規だけではなく、経営学・会計学など隣接領域も含めて関連文献の収集・検討を行ってきた。それによって、イギリスでは、CSR情報の開示の対象を大規模公開会社だけではなく、大規模非公開会社にまで拡大する方向に進んでいることが確認できた。また、取締役会の多様性に関して、性別だけではなく民族的多様性についても議論されており、その内容の検討も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ法については、CSR情報(会社の政治献金に関する情報)と取締役の義務との関係に関して、その議論状況及び理論的背景も含めておおむね理解することができ、その成果の一部も公表できた。他方で、イギリス法については、取締役の義務との関係から、CSR情報の開示がどのように位置付けられるのか十分な理解が得られたとはいえない状況にある。イギリスでの現地調査も行いつつ、引き続き研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ・イギリス法に関する学術論文等の文献収集・検討以外に、アメリカまたはイギリスでの現地調査を行い、その調査を基礎に検討・分析を進め、研究成果の一部を公表したいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、現地調査を行うことができず、今年度中に海外における現地調査を行うことから次年度使用額が生じた。使用計画としては、コロナ禍が落ち着き次第、今年度中にアメリカまたはイギリスにおいて現地調査を行う予定である。
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