2022 Fiscal Year Research-status Report
New trends of the German copyright contract law system
Project/Area Number |
21K13222
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
志賀 典之 追手門学院大学, 准教授 (20553548)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 著作権契約法 / ドイツ著作権法 / クリエイター保護 / 排他的ライセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
【2022年度実施研究成果の内容】:「ドイツ著作権法におけるライセンスの排他性の時間的制限──著作権契約法の選択肢としての一考察」『知的財産法学の新たな地平-高林龍先生古希記念論集』(2022年12月)471-501頁において、ドイツ著作権法に2016年改正により導入された40a条を扱った。同条は、包括的報酬を対価として許与された排他的ライセンスの排他性を強行規定により10年に限定し(ただし、ライセンス許与の5年後から、合意により契約期間全体への排他性の拡大を行うことが可能である)、これにより創作者に再度の交渉の機会を付与しようというものである。 【意義と重要性】:ドイツ著作権法は、2002年の大規模な著作権契約法整備以来、クリエイター保護を課題として強行的な報酬請求権制度の拡充を中心的に行ってきたと目されるところであるが、この2016年改正は、権利の排他性(権利の物権的次元)にも強行規定をもたらすことにより、その制度の拡充を一歩進めたものと評価しうるものである。また、1990年代以来課題とされてきた、定型約款等による立法保護期間全域にわたる排他的利用権の設定を阻止し、保護期間と排他的利用権存続期間の切り離し(Dietz[1995]のいう『デカップリング』)として--立法経過における多くの反対と妥協によって様々な限定が付され、実務的意義について疑義が呈されているものではあるとはいえ--一つの画期をなすものと考えることができる。このような動向を紹介・検討することにより、日本法における近時の独占的ライセンシーの地位強化を巡る議論の正当化根拠にも一定の批判的視座からの示唆を与えるとの意義を有するものであると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様式D-2-1「9補助事業期間中の研究実施計画」に記載の3つの課題のうち、第1課題(ドイツ著作権契約法の近時の動向)については、②学術論文オープンアクセスに関する38条4項の形成過程、③40a条については、前記「研究実績の概要」記載の文献において研究成果を公表した。 また、第2課題「創作者-経済的利用者-エンドユーザーの3者利益構造に基づくライセンスの正当化根拠の歴史的・基礎的検討」も、前記公表文献における1980年代以降のドイツ著作権契約法に関する議論の検討の中で部分的に公表しているが、今後これを主題とする検討成果の公表を予定している。なお、近時プラットフォーマーの意義の増大に伴い、Pfeifer,ZUM 2019 648等において、従来の3極に新たに媒介者を加えた4極構造が提唱されていることも、すでに前記公表文献において言及しているが、これを念頭にした検討を進めている。 現状で研究として着手・進捗はあるが成果未公表の課題としては、第1課題のうち、①主ライセンス消滅後のサブライセンス存続を承認した2012年ドイツ最高裁判例後の議論動向の検討、④消費者契約における約款統制等を含むエンドユーザーライセンス固有の利用権の正当化根拠の可能性の探究があり、これらも2023年度中の公表を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
様式D-2-1「9補助事業期間中の研究実施計画」に記載の3課題のうち、研究期間後半から着手する予定の第3課題(「意思に基づくライセンスと法律に基づく制限規定の著作物利用システムとしての役割分担」の三者・四者利益構造を基礎とした分析)に着手する。特に、研究計画申請時点からの議論状況の進展変化を踏まえて、特にプラットフォーマー(媒介者)の活動を念頭に置いた制度設計のあり方、及び、機械学習等における権利制限とオプトアウト等の意思表示の意義について、これらを巡る制度の比較法的検討を具体的課題として追加し、成果を公表する予定である。 研究遂行中であるが研究成果未公表の第1課題(ドイツ著作権契約法の近時の動向)の一部の具体的課題については、①主ライセンス消滅後のサブライセンス存続を承認した2012年ドイツ最高裁判例後の議論動向の検討、④消費者契約における約款統制等を含むエンドユーザーライセンス固有の利用権の正当化根拠の可能性の探究について、2023年度中の公表を予定している。また、第2課題(創作者-経済的利用者-エンドユーザーの3者利益構造に基づくライセンスの正当化根拠の歴史的・基礎的検討)についても、近時の研究成果等を反映し、これを主題とする検討成果の公表を予定している。
|
Causes of Carryover |
2022年度初めに、所属研究期間の変更に伴う研究室の移転により、購入資料及び機材の整理・管理に予定以上の時間を要したため、新規の資料購入の多くを次年度に先送りすることとした。また、全世界的な感染症対策の継続により、長距離の移動を伴う出張を差し控えることとしたため、旅費の出費が少ないものとなった。 2023年度には、研究室の安定により、2022年に先送りした分の新規資料の購入検討を行うことを予定している。
|