2021 Fiscal Year Research-status Report
選挙制度が投票行動・選挙戦略に与える影響の理論的・実証的研究
Project/Area Number |
21K13225
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝又 裕斗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任講師 (10815450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 選挙制度 / 投票行動 / 選挙戦略 / 政治学方法論 / 中選挙区制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,選挙制度が有権者の投票行動および政治家の選挙戦略に与える影響を理論的,実証的に解明することを目的とするものである。特に,日本政治を特徴づけてきた中選挙区制と世界的に広く利用されている比例代表制を統一的な理論のもとで比較し,その共通性と差異を明らかにすることを目的としている。 本年度は,まず,選挙制度が有権者の投票行動に与える影響について,理論的な研究と実証的な研究を行った。これらの研究成果の一部をワーキングペーパーとしてまとめ,査読付学術誌に投稿している。ここでは,中選挙区制と比例代表制に共通して見られる投票行動を理論化し,その含意を実証的に検証している。特に,これまで小選挙区制において研究が進められてきた有権者の戦略的な投票行動について,その研究デザインの問題点を指摘し,その課題を克服する研究デザインとして中選挙区制と比例代表制における投票行動の研究を位置付けている。 また,選挙制度が政治家の選挙戦略に与える影響についての理論的,実証的な研究を行い,その成果を査読付学術誌に掲載した。ここでは,日本の中選挙区制において大政党がどのように候補者を擁立するかという問題に取り組んでいる。 さらに,実証分析を行うための統計学的な方法論の開発を行い,その成果を査読付学術誌に投稿している。ここでは,主に観察データから因果効果を推定するための方法を整理し,その問題点を改善する新たな方法を提案している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,選挙制度が有権者の投票行動に与える影響についての理論的,実証的な研究は,当初予定していた以上の進度で進めることができた。研究成果の一部はすでにワーキングペーパーとしてまとめられ,査読付学術誌に投稿されている。 次に,選挙制度が政治家の選挙戦略に与える影響についての理論的,実証的な研究も,当初予定していた以上のペースで進めることができた。この研究の成果はすでに査読付学術誌に掲載されている。 また,実証分析を行うための統計学的な方法論の開発については,おおむね当初の計画通りに進展している。現在は,その研究成果を査読付学術誌に投稿している段階である。 他方で,東京都議会選挙に合わせた世論調査は,昨今の世論調査を取り巻く環境から実施が困難であった。これは,調査会社から政治的な質問についての慎重な対応を求められ,当初予定していた質問を入れることができなくなったことによる。次年度以降は今年度の世論調査の準備において判明した課題を克服して調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,選挙制度が有権者の投票行動に与える影響についての理論的,実証的な研究は,査読付学術誌に投稿しているワーキングペーパーを改訂し,掲載を目指す。 次に,選挙制度が政治家の選挙戦略に与える影響についての理論的,実証的な研究は,前述の有権者の投票行動への影響を取り込んだ新たな理論的,実証的な研究を予定している。 また,実証分析を行うための統計学的な方法論の開発については,査読付学術誌に投稿しているワーキングペーパーを改訂し,掲載を目指す。 最後に,参議院通常選挙に合わせた世論調査は,今年度の世論調査の準備段階で判明した課題に対応し,一部の計画を変更して実施する予定である。具体的には,選挙期間中の候補者に対する評価やイメージについての質問は調査会社の規定によって困難なものとなってきているため,選挙期間外における架空の選挙に関する調査を行うことや,参議院選挙についてはより抽象的で一般的な質問項目を準備することを検討している。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症の流行によって国内出張および海外出張が困難であったため,計画していた出張を断念した。また,今年度に計画していた世論調査は,近年の世論調査を取り巻く環境の変化により,調査会社から選挙期間中の政治的な質問項目を含む世論調査に慎重に対応するよう求められたため,計画していた調査が困難であった。そのため,質問項目を見直し,パイロット調査を含む世論調査を次年度に行うこととし,次年度に助成金を繰り越すこととした。
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