2021 Fiscal Year Research-status Report
破壊的イノベーションと持続的イノベーションの同時分析
Project/Area Number |
21K13259
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大木 一慶 金沢大学, 経済学経営学系, 講師 (90803445)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経済成長 / 破壊的イノベーション / 持続的イノベーション / R&D |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では『イノベーション活動の主要な担い手は大企業、中小企業のどちらだろうか?』という命題に対して、『破壊的イノベーションは中小企業が、持続的イノベーションは大企業が大きな担い手となる』という実証研究に着目し、その実証研究と整合的なマクロ経済モデルを構築して、理論的な分析を実施する。 破壊的イノベーション・持続的イノベーションと経済成長の関係を個別に分析した研究では、規模の大きい企業ほど持続的イノベーションに積極的な一方で、規模の小さい企業は破壊的イノベーション積極的になるという、実証研究と整合的な結果を得た。 本採択課題では、個別分析で築いた土台を発展させる。具体的には破壊的イノベーションと持続的イノベーションを同時に組み込んだモデルを分析することによって、両者の相互関係を重点的に分析する。破壊的イノベーションと持続的イノベーションは企業側のインセンティブの観点からみるとトレードオフの関係があることがわかっている。破壊的イノベーションへの研究補助が持続的イノベーションに負の影響を与え、逆に持続的イノベーションへの研究補助が破壊的イノベーションに負の影響を与えるため、『研究補助を与えればイノベーションが活発になり、経済成長率が上昇する』というロジックに基づく、多くの先行研究で見られた『研究補助』と『経済成長』の単純な相関関係が成り立たなくなるという結果をモデル上で確認できた。どのような条件下で両者の正の相関が成立しないのかということを、モデルを用いてうまく表現できるように引き続き研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は3年にわたる研究期間の初年度ということで、基礎固めの年度と位置付けた。本研究の心臓部にあたる「2種類のイノベーションの同時分析」を実施するためには、モデルの複雑性をかなり高める必要がある。複雑性の高いモデルであっても数値解析(Numerical analysis)に頼ることによって一定の成果を得ることは可能だが、解析的(Analytical)分析が可能なモデルを構築しておくことは、「定性的分析が可能になる」「別のモデルに組み込みやすくなる」といった具合に利点が大きい。つまりモデル構築時点における工夫を可能な限り施すことが後々の研究に活きてくるため、初期段階においていろいろと試行錯誤を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では論文執筆に着手できていないので、出来るだけ早い段階で論文執筆に着手し、DPとして刊行することを当面の目標としたい。
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Causes of Carryover |
概ね予定通りの執行となった。しかしコロナ禍が長引いたことによって、思った通りの出張ができなかったので、その分の支出額が少なくなった。
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