2021 Fiscal Year Research-status Report
マクロ経済学草創期におけるロバートソンの経済理論と知的交流
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21K13267
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
仲北浦 淳基 大正大学, 地域創生学部, 専任講師 (70823095)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 経済学説史 / 経済思想史 / マクロ経済学 / ケンブリッジ学派 / D.H. ロバートソン / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ケンブリッジ学派のデニス・ロバートソンの‘後期’の経済理論(1930~50年代),とくに経済成長論と厚生論(再分配論)を分析することで彼の経済理論を体系化すること,および,それらの理論が当時の経済学者からどのような評価を受けたかを明らかにすることである。そのために,これまで未整理だったPapers of Dennis Robertsonのおよそ半分を整理し,それらを含む文献を質的・量的(テキストマイニング)の双方から分析する。これらの目的のため、2021年度には以下の研究を行った。 ①Papers of Dennis Robertsonの整理:研究対象とする3,687葉を年代、テーマ、手稿か活字かなどの属性で整理して目録を作成した。その内、本研究に深く関係すると思われるものを列挙し、優先順位の高いものから翻刻作業を行なっている。 ②ロバートソンの政府観:費用逓減産業に対する国家介入に関するロバートソンの諸文献(1930年代前半)から彼の政府観を部分的に明らかにした。政府が一時的に赤字を負担して介入することを是認する一方で、その介入を継続的に行なうことには強く反対した。政府による事業への介入は、ある程度の経営の健全性(収益≧費用)が保たれていなければならないという主張が展開されており、この点において彼はピグーと対立していたことが明らかになった。 ③テキストマイニング研究:異なる年代に書かれた同テーマの文書のそれぞれの特徴を浮き彫りにするために、テキストマイニングの「対応分析」が応用できるかどうかを検討した。出現頻度の少ない語が見えにくくなるという課題はあるものの、時系列による文書の変化やそれらの特徴についてある程度は明らかにすることができることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画は予定通りに進められているが、コロナ感染症の影響により、翻刻サービスの消化頻度が想定よりも著しく遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度同様、計画通りに研究を進めていく。2022年度はハロッドとの書簡の翻刻を最優先し、それらを分析することで、マクロ経済学草創期におけるロバートソンの経済理論に対する外部の評価とロバートソンの応対を明らかにしたい。また、ロバートソンの貧困に関する論考や講演を分析することで、そこに彼の経済成長論と再分配論を見出したい。 なお、翻刻サービスは常に利用するが、他のサービスの併用も考えたい。いずれにしても、2021年度に作成した目録を参照しながら優先順位を明確にして研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症により、国内旅費・国外旅費を使用しなかったことと、翻刻サービスの遅れが生じたことがある。今年度も国内外への出張ができるか否かは未だ判断できない。一方で、翻刻サービスについては他の業者も併用することでペースの改善に努める。
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