2022 Fiscal Year Research-status Report
マクロ経済学草創期におけるロバートソンの経済理論と知的交流
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21K13267
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
仲北浦 淳基 大正大学, 地域創生学部, 専任講師 (70823095)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 経済学説史 / 経済思想史 / マクロ経済学 / ケンブリッジ学派 / D.H. ロバートソン / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケンブリッジ学派のデニス・ロバートソンの‘後期’の経済理論(1930~50年代)、とくに経済成長論と厚生論(再分配論)を分析することで彼の経済理論を体系化すること、および、それらの理論が当時の経済学者からどのような評価を受けたかを明らかにすることである。そのために、これまで未整理だったPapers of Dennis Robertsonのおよそ半分を整理し、それらを含む文献を質的・量的(テキストマイニング)の双方から分析する。これらの目的のため、2022年度には以下の研究を行った。 ①Papers of Dennis Robertsonの整理:2021年度に作成した目録を活用し、とくに本研究に深く関係すると思われるものを列挙し、優先順位の高いものから翻刻作業を行なった。 ②ロバートソンのマクロ経済理論:ロバートソンが経済成長、経済変動、格差といったマクロ的な経済現象についてどのように捉えていたかについて、マーシャルの「安楽基準」と「生活基準」という概念から明らかにした。ロバートソンは、経済成長についてそのメリットを認めつつも、経済変動というデメリットの面にも注目している。また、格差是正という課題については、生活水準の全体的な向上という形ではなく、先進国における生活水準の引き下げを伴いことを指摘していたことが分かった。 ③テキストマイニング研究:同一のテーマに関する異なる論者のそれぞれの特徴を浮き彫りにするために、「対応分析」が応用できるかどうかを検討した。出現頻度の少ない語が見えにくくなるという課題や、それぞれの論者が使用する用語の不統一という課題(これは特徴を探る手掛かりというポジティブな側面もある)はあるものの、それぞれの論者の特徴を概観する上では有用であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画は予定通りに進められているが、手稿解読の困難さから、翻刻サービスの消化頻度が想定よりも著しく遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度同様、計画通りに研究を進めていく。2023年度はとくにマーシャルやケインズとの関係に着眼し、ケンブリッジ学派におけるロバートソンの位置づけを行ないたい。なお、翻刻サービスは常に利用するが、他のサービスの併用も考えたい。いずれにしても、2021年度に作成した目録を参照しながら優先順位を明確にして研究を進める。
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Causes of Carryover |
学会がオンラインで開催されたことで旅費の支出がなかったことと、翻刻サービスの遅延により支出が少なくなったため。次年度は、翻刻サービスについて複数の事業者を利用するなどして、翻刻作業を早める工夫を施したい。
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