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2021 Fiscal Year Research-status Report

J.R.コモンズの制度経済学における制度再編の実験的方法の位置づけと今日的意義

Research Project

Project/Area Number 21K13268
Research InstitutionKansai University

Principal Investigator

北川 亘太  関西大学, 経済学部, 准教授 (20759922)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2025-03-31
KeywordsJ.R.コモンズ / 実験的方式 / 公益事業規制
Outline of Annual Research Achievements

本年度は、J.R.コモンズの主著1934年『制度経済学』(以下IE)のうち、長大な第10章「適正価値」の序盤(第一節「ヴェブレン」から第五節「習慣的前提」まで)の役割、意義、問題点を、制度再編の実験的方式に目配せしながら整理した。具体的には、以下の点を検討した。まず、第10章の序盤は1924年『法的基礎』の再説にすぎないのか、あるいは、素材が同じであっても、読者に彼の考え方を理解させるために論じ方を若干変えたものなのか。当時の読者にとって、そして、今日の私たちにとって、どのような分かりにくさが残っているか。そして、どのような点を強調すれば、「適正価値」と題する章の優れた導入になった可能性があったのか。まず、序盤の前半(第一節から第三節まで)を検討すると、もしこの前半がより明確なかたちで「適正な価格とサービスの規制」、すなわちマクロ・レベルに関する公共目的に照らした価格と実践の複合的な調整を主題にできていたならば、第8章までの適正価格論と第10章第六節以降の適正価値論をうまく架橋できていた可能性が見えてきた。次に、序盤の後半を検討すると、序盤全体の意義と役割が見えた。第1に、無形資産を、公共目的に照らして対立から秩序をつくるという制度経済学の観点から論じきった点である。第2に、こうした対立から秩序をつくるという議論の制度的背景と制度変化の方法を論じ、そこで司法の限界を論じ、それを克服しうるものとしてアメリカ的な実験的方式として委員会による適正な価値と実践の構築を議論した点である。さらに、この研究では、コモンズが、公共事業規制のための実験的方式もまた「理想的なものの実行可能な上限」のルールを定め、進歩に寄与しうると考えていたこと、そして、実際にそれが(一部で)実現していたことを明らかにした。この研究成果は関西大学経済学会の紀要『経済論集』において2022年6月に公表される予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

上述した研究実績をあげたのにくわえて、J.R.コモンズの実験的方式について、フランスの現代制度学派の考え方との共通点を明らかにする研究成果を出すことができたからである。

Strategy for Future Research Activity

2022年度は、J.R.コモンズが構想した、実験のための社会経済システムを整理したい。一部の先行研究は,彼の適正な資本主義の核心として委員会での労使による制度の形成・運営に強い光を当てている。しかし,彼が実験的方式を理論的に記述した箇所の大半は裁判所での試行錯誤についてであり,しかも主著の最後の文では合衆国を共産主義やファシズムという別の社会経済システム対比される一つの「実験室」とみなしている。それゆえ,この小課題では,今日の実験主義的政策論の「役割分担」の視点を導入し,彼が合衆国を別の社会経済システムと対比的に論じ始めた1929年大恐慌以降に書かれたもの(主著の11章や大恐慌期の多量のスピーチ原稿,入手済み)に基づいて,実験的方式の全社会的遂行という点で彼が政府諸部門や民間諸団体についてどのような役割分担を構想していたのかを整理する。

Causes of Carryover

次年度使用額が生じた理由は、学会や研究打ち合わせ等で国内出張を予定していたが、報告予定の学会がオンラインになったり、まん延防止等重点措置の期間に研究打ち合わせをオンラインで行うことにしたりと、その分の国内出張費を用いなかったからである。今年度の研究においてJ.R.コモンズとフランスの現代制度学派に大きな共通点があることが分かったため、次年度使用額は、フランスの現代制度学派をさらに理解するために、それについての書籍代に充てたい。

  • Research Products

    (3 results)

All 2022

All Journal Article (2 results) (of which Open Access: 2 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 仕事の実績の緩やかな搾取と抵抗 : フリーランス の共同体における日常的コミュニズムをめぐる摩擦2022

    • Author(s)
      北川亘太
    • Journal Title

      関西大学経済論集

      Volume: 71 巻4号 Pages: 115-149

    • Open Access
  • [Journal Article] コンヴァンシオナリストの構成的研究と倫理的役割2022

    • Author(s)
      北川亘太・黒澤悠
    • Journal Title

      大阪市大季刊経済研究

      Volume: 40巻1-4号 Pages: 20-45

    • Open Access
  • [Presentation] レギュラシオンとJ.R.コモンズの適正価値 集団的行動へのネオ・レギュラシオン・アプローチ2022

    • Author(s)
      北川亘太
    • Organizer
      進化経済学会 京都大会

URL: 

Published: 2022-12-28  

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